「みんGOL」とは1作目から20年にも及ぶ非常に長い付き合いなので、シリーズの様々な変化と共に人生を歩んできた……は流石に大げさだが、それでもオンラインでは近隣住民からモナコの住人まで様々な出会いと別れがあり、みんゴルにおける仲間内の結婚や、灼熱の真夏に家の倉庫で野良の子猫が生まれて放置もできず困っていた際、その夫妻に助けられたのはいい思い出だ。モモ吉は元気に暮らしているだろうか。

「New みんなのGOLF」の感想を一言で言うならば「未完の大器」だろう

ほかにもここでは語れないほど濃すぎるみんGOLライフを送ってきたわけだが、本作は一体どのような仕上がりになっているのか? 軽く緊張しながらのレビューとなった。最初に「New みんなのGOLF」の感想を一言で言うならば「未完の大器」だろう。一つ一つの完成度は非常に高いが、元々サービス初期におけるオンライン回りの完成度がやたら低いシリーズだったので覚悟はしていたが、今回は墜落に怯えるほど超低空飛行からのスタートだった。

半端さが目につくオンライン要素

今作におけるオンラインの目玉は「ホール争奪戦」。最大10名ずつのチームに別れるチーム戦で、すべてのプレイヤーが一斉にプレイを開始し、各ホールで相手チームより好スコアを出すとそのホールを奪取でき、奪取したホールの数が多いチームが勝利となる対戦モード。そのゴルフとは思えない慌ただしさと戦略性がおもしろく、各ホールのスタート地点へ瞬間移動ができるワープ装置が勝利の鍵を握るが、それを作動させる青いメダルは入手方法が限られているため「ここぞ!」という時に一気に投入するなど工夫が必要だ。

今作の立ち上げ時のオンラインの現状は、多くの面でシリーズファンにとって過去最低クラスと言えるの内容だ

シリーズ初心者には、1つのコースに最大50人が集まりゴルフや釣りなど会話をしながら楽しめるシステムは、現状の内容でも十分新鮮に映るだろう。白熱する「ホール争奪戦」もありコアなファンも楽しめるが、それでも今作の立ち上げ時のオンラインの現状は、多くの面でシリーズファンにとって過去最低クラスと言えるの内容だ。

まず30~50人のプレイヤーが同時に合計スコアを競い段位上昇を目指す「リアル大会」が未実装でプレイするうえでの目的が削がれ、対戦モードは最大4人でトータルスコアを競い合うストロークのみ、旧作のロビー制が廃止されたことで簡単にフレンドへ会いに行けなくなったシステムなどなど、そのダメダメなシステムを上げたらきりがないが、それは旧作の完成度が非常に高かった裏返しでもある。

そして筆者が一番気にしていたフレンドとのコミュニケーションだが、もちろん……と言っていいものではないが、旧作も機能を限定したスタートだったが、流石にここまで酷く感じるようなことはなかった。ロビー代わりのコースが広すぎるため人と出会うこと自体が少し大変になり、何らかのコミュニティに所属していないと、他者と交流を持つのが難しくなった。

またレアケースだが、マップのレーダーにフレンドのアイコンが表示されなくなったため、運が悪いと背後にいるフレンドの存在に気づくことができない。

New みんなのGOLF
今は話しかける方も気をつける必要があるかもしれない。

画面外のすぐ背後にフレンドの「ひでぽん」がやってきて話しかけてきたのだが、「ケンちゃん」との会話に夢中で画面を動かしていなかったため、30分ほどガン無視するという鬼畜プレイを不可抗力ながら演じてしまった。去り際に偶然画面にチラッと映ったため気づいたが、危うく1人のフレンドを絶望させるところだった。

さらにチャットログを表示すると文字が打てなくなったり、フレンドに会いに行くには複雑なメニュー操作が必要になるなど、ことあるごとにフレンドとのコミュケーションにユーザー側の努力が必要とされる。そのため1度は多くのフレンドが集結したが、それ以降多くのプレイヤーが集まることは少ない。

オンラインのオープンコースへはPS Plusの加入が不要で、そのままコースを回ることもできるのはかなり太っ腹

ただコース上でのコミュニケーション自体は柔軟で、釣りをしながらまったり会話をするもよし、全員同時に同フロアのラウンドを開始して、大人数でカオスなゴルフをチャットを嗜みながらラウンドすることだってできる。加えてオンラインのオープンコースへはPS Plusの加入が不要で、そのままコースを回ることもできるのはかなり太っ腹な配慮だ。もちろん対戦部屋などすべての機能を楽しむには、PS Plusへの加入が必要となっている。

New みんなのGOLF
グループでの同時ラウンドを、早くリアル大会や対戦部屋という形で実現して欲しい。

しかしフレンドの集まりが悪い一番の理由は、やはりゴルフ自体で遊ぶ幅が限られていることだろう。せめて以前のように「リアル大会」があればよかったのだが、現状「ホール争奪戦」と日替わりの「デイリーランキング勝負」しか遊べない。最大4人による対戦部屋もあるのが、順番に操作をするストロークしかなくプレイを終えるのに最大2時間以上を費やすためおいそれと遊べない。

釣りやカートなどおまけの要素は意外と作り込まれているが、プレイヤーが遊びたいのはそれではなく、せっかくのオンラインなのに内容の性格上1人で黙々とプレイする感覚にも陥ってしまう。プレイヤーが努力をすれば一緒にラウンドも可能だが、やはり各ホールの合間にチャットも楽しめる「リアル大会」の早期の登場も願うばかりだ。

過去最大のボリュームで充実したオフラインモード

今作のオフラインモードは、VSキャラとの対戦などイベント面のボリュームは過去最大級で長く楽しめるが、どちらかというとオンラインへ旅立つための舞台裏といった様相が色濃い。オンラインではコースにロビーとしての機能が割り当てられている。そのため対戦などはもちろん、そのままでは自由にオンラインでフレンドと会うだけでも難しく、オフラインの大会やVSキャラとの対戦を強制されられると感じるプレイヤーもいるだろう。

New みんなのGOLF
今回の仕様では最初から各コースを自由に往来したかった。

コース以外にも能力の高いゴルフクラブやアバターアイテムの獲得に、内容の変化が少ない大会を地道にプレイし続けるのはもどかしいが、プレイを重ねるだけで自然にキャラクターが成長してショットの飛距離が伸びることで、少しずつだが同じコースでも攻略の幅が増えていく。この過程は成長幅が広いため、シリーズの中で特に楽しく感じられる。オンラインが一番の目的のプレイヤーには、目の前に吊された人参を追いかける馬車馬のようなプレイが少々辛いことには変わりないが……。

少なからずストーリーを表現するような演出が加わった進化は見られる

オフラインモードの流れは、各クラスの大会に参加し、一定値の経験を稼ぐことでVSキャラクターを出現&倒すことでVSキャラの衣装と図鑑を獲得し次に移る。この作業は相変わらず単調で飽きは早そうだが、少なからずストーリーを表現するような演出が加わった進化は見られる。また大会で一定以上の成績を収めることで大量のNPCの獲得が可能で、それらは拠点となるホームエリアや試合のギャラリーとして出現するため、オフでもオンラインのような賑わいとなっていく。

なかにはどこかで見たことのあるようなキャラクターも存在し(偶然似ているキャラクターも含む)、そういったキャラクターを探すのもなかなか楽しく、気に入ったNPCのデザインをBOXへ登録することも可能だ。

New みんなのGOLF
ゲーム業界ではSIEWWS吉田プレジデント、芸能系ではキアヌ・リーブスや明石家さんま、アニメ系では「ドラゴンボール」の亀仙人や18号っぽいNPCらが登場。

パーツを集めるにはゲーム本編を進める必要はあるのだが、キャラクタークリエイトはなかなか強力で、アニメや実写問わず思いの外そっくりなキャラクターを作れて楽しめる。制作したエディットキャラは、ホームエリアの特定のエリアに集合するのでついつい色々なキャラを作り並べたくなってしまう。せっかくなのでIGN JAPAN編集部の主な面々を作り「しゃべりすぎGAMER」を再現するつもりが、キャラを作るのが楽しく収拾が付かなくなってしまったが。

New みんなのGOLF
題名「本日のゲストはキアヌ・リーブス?」

難点はVSキャラもエディットで作られているため見た目の個性が弱く、今回も登場する「みんGOL」の顔「スズキ」のような濃いキャラクターが新たに誕生しなかっことが挙げられる。その一方でデザインをそのまま利用したり、自分好みにアレンジしてカスタムキャラに利用できる自由度の高さは売りと言えるだろう。

おそらくゲームの寿命を伸ばす意図でイベントの発生を制限しているものと思うが、イベントの発生を絞りすぎるのも問題だ

概ね満足のオフラインだが、今のところ倒したVSキャラと再対戦する方法がないため、暇つぶしにVSキャラとの再戦ができない。また、せっかくNPCが歩き回れるホームエリアがあるのだから、攻略したVSキャラは色々な場所に配置しそこで再戦や、ミニゲームのイベントにつなげてもおもしろかっただろう。またとある時点で攻略に必要なイベントそのものが発生しなくなる。おそらくゲームの寿命を伸ばす意図でイベントの発生を制限しているものと思うが、イベントの発生を絞りすぎるのも問題だ。

コース、ショット、カスタムクラブは気にかかる点が多い

本編とも言えるゴルフ部分は収録コースが5種類と、キャラクリエイトや釣りなどおまけ要素が多いので単純な比較はできないが、練習場も収録されておらずコンテンツのボリュームはシリーズ最小と言える。しかし、山々に囲まれた谷間に位置するコースや英国のリンクスのような自然との闘いを求められるコースまで、それぞれが見せるコースの表情は豊かで、特に初心者はキャラクターとプレイヤー自身の成長により、常に新しい発見に満ちたコース戦略を楽しめるだろう。

一方でインペリアルガーデンなど、一部の収録コースはかなり玄人向けの設計で手が付けられないと思うが、有料DLCとして配信中の旧作からの2種類のコースは、フェアウェイの幅やハザード(障害物)の配置などコース設計は根本的に違うためまるで別のゲームのように感じるだろう。その難易度は低く初心者も安心して遊べるのでお勧めだが、できれば標準で収録して欲しかった。

New みんなのGOLF
難易度は高いが1発が狙える遊び心のあるコース設計も健在

ショットのブレ具合は、半分運任せのロシアンルーレットのような感覚だ

コースの難易度を微妙に上げているのがショットシステムだ。これまではジャストインパクトを決めれば概ね真っ直ぐ飛んでいくのが通例だったが、今作では弾道のブレ幅が大きくなり、特にバックスピンを使ったときのショットのブレ具合は、半分運任せのロシアンルーレットのような感覚だ。これはこれでリアルと言えるのだが、高精度なショットを可能にしていたシステムからの大きな変更は、筆者の周りでも戸惑いの声が多い。

パッティングはショット同様パワーゲージで調整するのだが、2~3mなど非常に微妙な距離では、一瞬で目的のパワーをカーソルが通りすぎてしまうため意外と難しかった。そこで本作では「アプローチモード」が新たに登場し、1~5mの短い距離で繊細なパワー調整が可能になった。しかし、ショットモードは見た目の違いに乏しく、切り替えせずに(あるいはそのまま)パットを開始する事故が起きやすい。そのため大きなお世話に感じるこのシステムを、結局筆者は使っていない。

高めの難易度ながら絶妙なバランスを維持しているものの、「カスタムクラブ」が不気味な存在だ。これはゲームをある程度進めることで解放され、集めた宝石や有料チケットを使用する事で自分好みの性能のクラブを作ることができる新要素だが、運次第で性能が高くなりすぎる。具体的には改造で凶悪なまでの飛距離を出せるようになり、その暴力的なパワーで様々なハザード(障害物)を打ち砕いていけるのだ。

New みんなのGOLF

旧作もそういった傾向はあったのだが、失敗すれば明後日の方向へ飛んでいき即死する究極の「ドクロショット」や、同じく凶暴なパワーを誇るがエースプレイヤーでも操りきれない暴れ馬「マグナム」ギアなど、長所と短所があったからこそ攻略におもしろみが出ていた。しかし本作での「カスタムクラブ」では、そういった短所が少ない「力こそパワー!」と言わんばかりのクラブの存在はジャストインパクトのブレ幅の大きさも相まって、長所の違うクラブの使い分けという概念も吹き飛ばす。

「ラフが得意に」「15yアプローチが使える」「パワー調整がしやすく」などの、特殊ボールの重要性が一気に増し選択の幅が増えるなどした改良も多い

そういった危うさは多々見受けられるが、飛距離やコントロール性能が変化するリアルな設定のボールを思い切って廃止したことで、「ラフが得意に」「15yアプローチが使える」「パワー調整がしやすく」などの、特殊ボールの重要性が一気に増し選択の幅が増えるなどした改良も多い。カートや釣りと言ったおまけ要素を含めて、プレイヤーを少しでも楽しませようとする努力も今も昔も変わらない。こういった気配りをプレイヤーが感じるからこそ、国民的ゴルフゲームとして長く愛され続けているのだろう。