2015年のアーケード版から約2年でようやく家庭用版が登場。かつて「鉄拳2」~「鉄拳3」の間で19年もストーリーが進行しファンを驚かせたが、初代のリリースから気がつけば約22年の月日が経過し、「初代」~「鉄拳7」のシナリオ進行の約23年に奇しくもリアルの時が追いつき中々感慨深いものがある。この長きにわたる時の流れの中で、平八と一八による世界を巻き込むこれ以上ないほど迷惑な「親子喧嘩」がついに決着する!

そして、ゲームシステムやグラフィックもシリーズを重ねて見違えるほど進化し、PS4版ではオマケ要素として「PS VR」にも対応するなど内容もますます充実している。アーケード版の登場から結構な時間が経過したが、それに見合うだけのストーリーが収録されていた。

新規にもやさしめで、満足感の高いストーリーモード

家庭版の目玉はストーリーモードにある。その点は今も昔も変わらないと思うのだが、今回は明確な「メインストーリー」が設けられ、シリーズ最大級の規模で三島家にまつわる物語が描かれる。さらに「ストリートファイター」から「豪鬼」が重要な立ち位置で物語に絡み、より混沌とした物語にしていく。

鉄拳7
二人と対峙できるのは彼しかいないだろう
豪鬼の存在に不安を感じたが、周知のキャラクターという点を除いても、その力強い存在感でストーリーをより熱いものへと導いてくれた

正直、他作品から参戦する豪鬼の存在に不安を感じたが、周知のキャラクターという点を除いても、その力強い存在感でストーリーをより熱いものへと導いてくれた。そしてアーケード版のオープニングは見るものを熱く焚き付ける内容だったが、家庭用版は焚き付けながらも時に見るものを静かに引きつけ、本編で平八と一八の思いはマグマよりも熱く極限まで燃え上がらせる。

数多くのキャラクターが収録されているが、メインストーリーに絡むキャラクターは少なめで少し寂しく、もう少し絡んで欲しいキャラクターも多数存在した。だが戦闘中にかつての名場面のカットCGが挿入され、イベントムービーでは誰も詳細を知らなかった胸に秘めた思いも垣間見えてくるなど、コアなファンほどより強烈なインパクトを受ける作りになっている。ある程度過去の出来事なども自然に語られるため、新規プレイヤーでも話について行きやすいのは好印象だ。

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過去の因縁も様々な形で見せてくれる

それだけに初心者には終盤の難易度が高すぎてもったいない。ストーリーでは初心者救済システムを導入し、各種アシスト機能で簡単に「風神拳」を連発したり簡易コンボを決めることが可能だが、それで補い切れていない。かつて家庭用版「鉄拳TAG2」でも難易度が高くアップデートで調整が施されたが、アシストを総動員しても「鉄拳TAG2」の調整前より手強い印象に見える。

鉄拳7
難易度を一番下げれば、簡易コンボを簡単に出せるようになる

三島家以外の登場キャラクターにも個別エピソードが用意されている。その中にはメインストーリーを補完するようなエピソードや、過去のシリーズ同様ショートコントのノリで笑い飛ばしてくれるものまで非常に多彩だ。中には「ああ、彼はそんな存在だったな」と思い起こさせてくれるキャラや、扱いがかっこよすぎて少々納得できない獣まで充実している。

「エピソードモード」の欠点を上げるとすれば、各エピソードの戦闘が1戦で終わってしまい物足りないところだ。ここまで気楽なモードを見せられると、膨大な数のキャラクターの全てで何戦も戦いながらエンディングという流れはプレイしたくないが、それでも少し何かが欲しいというわがままな気持ちが湧き上がってくるのも確かだ。

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エピソード数は、メインストーリーを進めることで増えていく
「The Mishima Saga」のコンテンツは内容、ボリュームともに充実した内容で完成度は非常に高い

総じて「The Mishima Saga」のコンテンツは内容、ボリュームともに充実した内容で完成度は非常に高い。ロード自体はやや長めだが、ストーリーの進行中に読み込みが行われるため、プレイする上でのテンポはそれほど悪くない。少し細かく言えば、戦闘直前にスキップのできない演出が少し入るため、ステージのリトライが少し面倒なことぐらいだろう。

新顔「エリザ」は、テクニカルだが初心者も扱える吸血ガール

家庭用の追加キャラクターのなかでは「鉄拳レボリューション」にこそ参戦していたものの、ナンバリングには初参戦となる「エリザ」が印象深い。「ストリートファイター」の波動拳や昇龍拳のようなコマンド技や「ブラッディゲージ(スパコンゲージに相当)」を持つのが特徴だ。敵を大きく削るコンボは、コマンド入力やスパコン入力で複雑になるが、その基礎部分はシンプルな技の組み合わせで使いやすい。攻撃ボタンの組み合わせもシンプルで、敵の体力を吸い取る投げもあるなど意外と初心者でも遊びやすい。

若干圧力不足で打ち上げも苦労するため極めようとすると大変で、基本は上級者向きキャラだと思うが、空中コンボにミーティアライト(←LP、RP、LK)を絡める非常に簡単なコンボで合計40~60+α程度は稼げ、全体的に少しトリッキーだが逆に初心者同士で使う分には、おもしろい戦いができるだろう。

鉄拳7

どう頑張ってもメインストーリーに絡みようがないいのは致し方ないところだが、うっかり600年も眠ってしまったお茶目な吸血鬼は、エピソードでも半分以上居眠りをするなど良い味を出しており、今後の活躍を期待したくなる魅力あふれるキャラクターだ。

レイジーアーツなど初心者向けの調整も伺える基本システム

鉄拳と言えば、四肢と攻撃ボタンが連動した珍しい戦闘システムで、膨大な数のコマンドと派手な空中コンボの敷居の高さから初心者を怯ませる。丁寧にプレイをしていけば徐々に次に繰り出すべき追い打ちも見え始め、四肢を使った攻撃システムは不思議と自分の体のように動かせるようになる感覚がたまらなく好きだ。

アーケード版の稼働からずいぶん時間が経ち詳しく語るまでもないのだが、攻撃を受けても怯まない「パワークラッシュ」や、そのパワーアップ版とも言える超必殺技の「レイジアーツ」の導入で、駆け引きをより熱いものにしつつ、初心者でも困ったときの最終兵器として希望の光となっている。「レイジアーツ」は慣れてしまえばそうそう当たるものではないのだが、踏ん張って挑めれば、強者相手にも一矢報いるチャンスが生まれるのは心強いだろう。

鉄拳7
強いて欠点を上げるなら対戦前のロード時間だろう

さらに家庭用版では、コマンド入力が必要な「レイジアーツ」を任意の攻撃ボタンに割り当てることが可能で、より初心者向けの調整が良い方向に働き間口を広げ、上級者には攻撃の選択肢を大きく広げられる「レイジドライブ」も用意されている。

強いて欠点を上げるなら対戦前のロード時間だろう。ゲームの規模を考えると妥協する必要はあるのだが、やはり多少気になってしまう。

その他のゲームモード

謎の不成立などマッチングシステム回りの不具合が少し多い

オンラインモードは3種類のマッチが用意されている。対戦時のラグの品質は概ね良好で、主に「韓国(KO)」や「台湾(TC)」圏のプレイヤーとも全くラグを感じないプレイも可能。国内プレイヤーでも回線品質が最低になる事もあり、対戦品質は相手との相性によるものが大きいだろう。しかし、謎の不成立などマッチングシステム回りの不具合が少し多い(不具合でゲームが停止することはない)。

「ランキングマッチ」は文字通り常に高みを目指して精進するモードだが、検索範囲を調整しても「自分に近い段位が最優先」されるため、若干マッチングに時間がかかる。その分程よいレベル差のマッチングが多めで、調子がよければ気持ちよく段位が上がっていくこともある。

鉄拳7
当然すさまじい勢いで落ちることもある。

「プレイヤーマッチ」では、勝敗を気にせず気楽に対戦や練習ができるのがやはり強みだ。セッションは勝ち抜き制で残りのメンバーは観戦なので、会話しながらゆっくりプレイするのに適しているが、ガツガツプレイしたい場合は、クイックマッチを選ぼう。

「トーナメント」には2種類の試合形式があり、通常の「シングルエリミネーション」と、敗者復活戦のある「ダブルエリミネーション」が用意されている。

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トーナメントは人が足りない状態でも開始できる

敗者復活は「タイミングを問わず(初戦や準決勝でも)、とりあえず一回負けてOK」という初心者にも優しいモード。もちろん、運が悪ければ2戦連続で優勝候補と当たる不運に巡り会うが、仮に負けても強者同士の試合を眺めるのは楽しく、自分がよく使うキャラの試合ならプレイの参考にもなる。トーナメント終了後には、全プレイヤーにご褒美アイテムがドロップし、上位プレイヤーほどレアアイテムが出るためより熱く楽しめる。

その入手アイテムは、プレイキャラクターの見た目をカスタマイズできる「キャラクタークリエイト」で利用する。アーケードや旧作同様に個性豊かなキャラクターをクリエイトできるが、装備はちょっと変なユニークアイテムが多く、変キャラはバリエーション豊かだが、かっこよく決めようと思うとパターンが限られてしまう。

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おまえらは一体誰だ!

ちなみに筆者の楽しみ方は、可能な限り攻略本や攻略サイトに頼らず、一つずつ技を覚えながら手探りでコンボを探りながら覚えていくスタイルだ。流石にサンプルコンボを参考にするが、その中から自分の使いやすいパターンを抽出しながらアレンジするのも楽しい。四六時中プレイできるわけではないので上達に時間がかかりいつも苦労しているわけだが、コンボの道が見え始めると一気に楽しくなってくる。

せめて鉄拳の基礎を学べるモードがあっても良かっただろうとは思う

このような感じでプラクティスに籠もることが多いが、他の格闘ゲームと比較して内容はユーザーに丸投げだ。一応全コマンドとサンプルコンボをリスト表示可能で、コマンドをデモ再生すれば入力タイミングを音で教えてもらえるが、一から始める初心者に鉄拳のプラクティスは目標が見えづらく少し辛い。せめて鉄拳の基礎を学べるモードがあっても良かっただろうとは思う。

もう一声欲しかったVRモード

PS4版「鉄拳7」は早くからPS VRへの対応がアナウンスされ、それを指揮しているのがPS VRの立役者の一人である「原田勝弘」プロデューサーという事でより期待が高まっていた。まず基本的な前提として、VRコンテンツはPS4版固有コンテンツのため開発コストはあまりかけられないだろうが、それを差し引いても少し「もう一声」と言いたくなる惜しいものだった。

コンテンツは「VR VIWER」と「VR BATTLE」の2種類を収録しているが、詳細を見るとVR以前にコンテンツとして中途半端。まず「VIWER」のシステムは、は通常モードの「キャラクターカスタマイズ」がベースで、カスタマイズを施したキャラクターモデルをVRでジックリと眺めるモードが追加され、これはこれで良いのだが問題は「VR BATTLE」だ。

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スクリーンショットでは伝わらないが、VRでは非常に美しく仕上がっている

「VR BATTLE」は、無限フィールドの「INFINITE AZURE」で「プラクティス」を楽しむモードで、VR要素として常にスローモーションでキャラクターの動きをジックリ眺められる機能も追加されている。しかしそれだけである。

バトルエフェクトは、本物の花火をさらに色鮮やかにしたような閃光が目に飛び込んでくるなど、そういった部分は意外と楽しめる

さらにカスタマイズしたキャラクターを使用する事もできないのも残念だが、VRのモデル自体はは非常に良くできている。できるだけジックリ近づくと、衣装の質感から肌に浮き出る血管など細部までクオリティが高い。さらにバトルエフェクトは、本物の花火をさらに色鮮やかにしたような閃光が目に飛び込んでくるなど、そういった部分は意外と楽しめる。

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エフェクトが目に飛び込むため迫力は満点だ

とはいえVRはあくまでオマケと割り切るべき内容で、せめて「VR BATTLE」では「COM vs COMモード」が欲しいところだ。その時のみフィールドを自由に歩け、バトルを第三者として見学できたらまた違った楽しみ方もできただろう。