『GRAVEL』はその名の通り、大自然を利用したグラベルコースが中心のオフロードレーシングゲーム。登場車種は決して多いとまでは言えないものの、最新車種からレジェンド級の車まで幅広く登場する。レーシングゲームとしての設計は、どちらかといえばリアルテイストにまとめられているが、本作の目指すところは、空を舞うようなビッグジャンプに、ど派手な演出と、一歩間違えば死に神が顔を覗かせる離れ業を魅力とするエクストリームスポーツに近かった。

特に本作で得られる爽快感は相当なもので、数字的には最大で時速200キロ程度となっているが、シミュレーター系のレーシングゲームと比較すれば、時速300キロは優に超える体感速度で楽しめる。

グラベル系のレーシングゲームの場合、荒れた路面のギャップで車が跳ねて、スピードが出るほどコントロールが難しくなるため、あまりに速度が上がるとコントロール不能に陥ってしまうが、本作では細かいギャップはコントローラーの振動で表現する程度なので、マックススピードでも自由にコントロールしやすいのも特徴だ。

GRAVEL レビュー
小さいジャンプポイントなどは点在するので、特にコーナー手前では注意が必要だ。
爽快感が異様なほど高くなっている

操作感覚の判断は難しいのだが、しいて言えばリアルタイプのレーシングゲームに分類できる。オプションでアシストを切ったり、サスペンションなど足回りをセッティングすることで、好みの挙動に調整しながらドリフトを決めたりできるが、いずれにしても比較的楽に車の操作が可能で遊びやすい。AIの攻撃性も低くコース幅も広いため、自由に走れることも相まって爽快感が異様なほど高くなっているわけだ。

ただスタジアム系のサーキットでは、爽快感とは真逆のガチンコレースになりがちなので、プレイヤーのスキルが大きく問われる。

そしてリアルテイストの操作性でありながら、スリップストリームなどのリアルなテクニックは存在せず、全体的なコースレイアウトもやや大味で、テクニカルで難しいセクションが少なかったりと、よく言えば初心者に優しく、悪く言えばシンプルでものたりない。

GRAVEL レビュー
グラベルステージを高速で走ってもあまり車が暴れないので走りやすい。
ストレスの発散や暇を潰すというゲームの本懐を真っ当している

車の挙動とハイパワーによって失うグリップ感など、その操作感はリアルな感じが出ているものの、レースイベントから伝わってくるゲームの方向性は思いっ切りカジュアルに振り切っているので「リアル系? アーケード系?」と、イマイチどっちつかずな印象になっている。

ただ、それが悪い方向性になっているわけではなく、海の浅瀬を豪快に突っ切ったり、文字通り宙を舞う感覚になるほど豪快なジャンプも目白押しで、ストレスの発散や暇を潰すというゲームの本懐を真っ当している大自然のステージは素晴らしい。

GRAVEL レビュー
ジャンプ台も多く、50~100m級のビッグジャンプも珍しくない。

残念なのは、ハンドルコントローラーにも対応しており、ハンドル操作に対してリニアに動くダイレクト感はいいのだが、直線でハンドルを切り始めたときのフォースフィードバックが皆無なため、車の状態が少しわかりづらい。

また、オンラインは最初から過疎化が進んでいるためソロモード専用として割り切る必要がある。一応ウィークリーのタイムアタックチャレンジはあるものの、マルチプレイの過疎ばかりはどうしようもないので、オンラインに関してはあらかじめ評価から除外している……。

そこで重要になってくるのがソロ専用モード。ゲームの流れは、架空のTV番組「オフロードマスターズ」に参加するというもので、各エピソードに収録されているランダムで登場する全5種類のレースを消化しながら、5人のレースマスターへの挑戦権を獲得しながらエンディングを目指す。

その過程の中で、レースで派手なドリフトを決めたりすると経験値に該当するスコアを与えられる。それによってプレイヤーのレベルが上り、新しい車両やカラーリングが解放されていくやり込み要素はあるのだが、新車は普通にゲームをクリアするだけですべてを得られるので、やり込み要素とは呼べないが、お手軽なゲーム要素とも言えるので、ここはお好み次第と言えるだろう。

GRAVEL レビュー
主なプレイ目標は、各レースをクリアしながら★を集めてレースマスターへ挑戦していくことのみ。

ただやり込み以前に、収録しているWRCなど実在のレース車両は頑張って再現しているのだが、マールボロやState Express 555など、タバコの広告規制で再現できないステッカーは理解できるが、それ以外の再現できない広告や、省略しているカーナンバーなどが重なりオリジナルの面影が薄れ「この車、何かちょっと違う」と、首をかしげたくなる車もあるのは少し残念だ。

車のカラーリングに関しても魅力的なものが少ないので、これらをゲームプレイのモチベーションとするのは無理があるだろう。そのため、末永くイベントに挑戦し続けたり、アイテムの収集に費やすなどのやり込み要素は不足している。

GRAVEL レビュー
555であまりにも有名なスバルインプレッサ WRCは”555″の部分を”)))”で代用。

そして全体的なボリュームは70~80レースほどと、レーシングゲームのなかではそれほど多いとは言えないのだが、コースは50種類前後とバリエーションが多く、変化のあるレースモードも相まってプレイ中の満足感はそれなりに高めになっている。

ゲームは淡々とレースを消化するだけなのが少々辛い

ただやり込み要素とは言わなくても、せめてイベントに変化やミッションの合間に何かしらのアクセントがあればさらによかっただろう。一応通常のレースイベントに勝利して★を集め、一定数貯めるごとに5人のレースマスターに対して1人ずつ挑戦していくという疑似TV番組の演出があるものの、ゲームは淡々とレースを消化するだけなのが少々辛い。

せっかくレースマスターというキャラクターを用意しているのだから、アニメ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』のように、レース中に会話(掛け合い)を挿入したり、レース後の会話イベントぐらいはほしかったところだ。

GRAVEL レビュー
レースマスターへの挑戦時に紹介映像が流れるだけで、それ以外にキャラクターとして彼らが登場することはない……。

とまあ、少し粗雑な部分が目立ち、いくらカジュアルとは言え単調な感じは否めない。しかし、オーソドックスな「ラップレース」などや「タイムアタック」を収録しているのは当然として、ひとつひとつのレース自体はコースレイアウトを含めてルールやデザインに工夫があるため、イベント自体は意外と遊べる部類なだけに惜しい感じになっている。

難易度的にはむしろレーシングゲーム上級者が苦労する

それらレースイベントの難易度は少し高めで、ドリフトは雑な操作でもコントロールできる一面はあるのだが、減速をキッチリ行わないとうまくコーナーを曲がれないバランスだ。カジュアルなゲームだが、ドライビングの基礎を問われる、レーシングゲーム初心者は難易度を落とさないと少し難しい難易度になっている。

難易度を落としても難しいと感じるときは、前の車を追尾する感覚でコースや走り方を覚えながら、どうしようもないほどのミスをしたらリワインド(巻き戻し)を繰り返せば、自然とテクニックは上達してクリアできるだろう。そして、難易度的にはむしろレーシングゲーム上級者が苦労する。

通常レーシングゲームにおいて難易度を上げるとAIの走行効率が上がり、タイムが向上するというのが常ではあるが、本作はAIの変化はもちろん、AIの乗る車自体も早くなる。

それはおそらく車本来の性能をAIが引き出すようになるためで、目に見えてAIの直線速度が上がるので、タイムアタック系のレースイベントも含めて、難易度をひとつあげるだけでミスの許容範囲が狭くなるため、標準の難易度では物足りないから、少しだけ難易度を上げたいというプレイヤーには少々振れ幅が大きく厳しいゲームバランスになっている。

イベントにもよるが、難易度ミディアムまでは適当な走行でも勝利できるため、その際に身についた雑な走り方が、難易度を上げたとき極端に難しく感じる原因になっていそうだ。

そういったテクニカル面での厳しさが特に現れているのが「スマッシュアップ」で、このモードはバランスが悪いと感じるほどだ。コース上に設置されたスロットに表示される「↑」に体当たりしながら、目標タイムを目指してゴールまで駆け抜けるというものなのだが、ルーレットの設置間隔があまりにも短いため、反応しきれず事故ることが多々発生する。

GRAVEL レビュー
×に触れると大減速するため、↑を正確に狙うテクニックと運も必要になる。

筆者が下手と言ってしまえばそれまでだが、ハード以上の難易度だとすべて全開に近い走行が求められるため、コースをやスロットの場所を覚えるのはもちろんのこと、矢印を的確に狙うテクニックや、狙いやすい位置に↑が出現する運も必要になってくる。だが、技術を追求するゲームにおいて運が必要なのは、努力で補いきれないためストレスが溜まる。

すべてのモードに言えることだが、車によって有利不利がある感じなので難しさを多少緩和できるが、どの車のスペックが高いのかがよく分からないので(もしかしたら、ほとんど違いはないかもしれない)、本作においてはオプションで難易度を微調整しながら、肩の力を抜いて大自然のコースを満喫するのがいいだろう。