インディーゲームだが3作目まで続編が発売されており、かつスピンオフタイトルもいくつか登場。しかも最新作は、「セガ3D復刻アーカイブス」シリーズで有名なあのエムツーが開発を担当するまでになった。ここまで立派なシリーズになれば、一目を置かれても不思議ではないだろう?

2017年12月27日にニンテンドー3DSで配信された「魔神少女 エピソード3 -勇者と愚者-」(以下、魔神少女3)は、実はそんなすごいタイトルなのである。しかし、成長した家庭用ゲーム機のシリーズタイトルが“マンネリ”や“新機軸を打ち出そうとして失敗”などの問題を抱えていたように、本作もまた転換期の苦しみを味わっている一作なのだ。

さて、ゲーム内容について語る前に、同人サークル「INSIDE SYSTEM」が誇る「魔神少女」シリーズの大きな特徴を話そう。言ってしまえば本シリーズは“安価で遊びごたえがたっぷりある2Dアクション”である。1作目は400円、クオリティアップした2作目でも800円、3作目は1000円となっているが、それでもまだまだ低価格と言えるであろう。3DSというハードは低年齢層も多く所持しているということもあり、この安くて遊びごたえのあるゲームは人気を博した。好みにさえ合えば、とにかく嫌というほどやり込める要素があったのだ。

スッキリとした「ロックマン」ライクな2Dアクション(ただし美少女はたっぷり)

魔神少女 エピソード3 -勇者と愚者- レビュー

本作の主人公は、これまでと同じく魔神の少女「ジズー」。彼女は地上でなんらかの揉め事が起こるとしぶしぶ動き出し問題を解決してくれるのだが、ストーリーは特に気にしなくてよい。タイトルはエピソード3となっているが過去作との繋がりもほぼない。新参者に優しいとも言えるし、物語が事実上存在しないとも言える。

ともあれジズーは、魔法獅子団なるグループに所属していた数々の美少女に会いに行くことになる。しかし道中にはさまざまな魔物がいるし、美少女に会えてもすんなりと言うことを聞いてくれるわけではない。つまり、道中は雑魚をなぎ倒し、ステージの最後には目的の人物に会ってバトルすることになる。もっと大雑把に言ってしまえば、美少女がいっぱい出てくる「ロックマン」ライクな2Dアクション、“美少女のロックマン”なのだ。

魔神少女 エピソード3 -勇者と愚者- レビュー

基本はショットで敵を倒し、空中でも発動できるダッシュ能力「ロードアタック」をうまく使って戦うことになるのだが、システムの一部は「グラディウス」ライクだ。光っている敵を倒すとシェガーのかけらなるものが手に入り、スピードアップ、対空能力アップ、ショット強化といった能力を選択することができる。スピードを強化したら「スピーダッ」と聞こえてきそうなくらいだ。

また、恒久的な成長要素も存在する。敵を倒した際に手に入るトレースなるものを集めると、ショップでライフアップや残機数増加など効果が永続する強化を手にすることが可能。ステージ中には純色のシェガーというものも隠されているが、これを集めればプレイヤーレベルが上昇しより強力な強化アイテムを買えるようになる。このあたりが「ロックマン」中期で追加された探索要素的なものになるわけだ。

魔神少女 エピソード3 -勇者と愚者- レビュー
ボス戦の様子。ボスはそれぞれ特殊な「リベンジマジック」というものを使って攻撃を仕掛けてくる。

このように「ロックマン」ライクだと、ボスを倒して能力を奪い取れる……と思うが、それは今作にはない。前作までにはテクニカルスキルという名前で存在したのだが、今作でバッサリと削除された。そう、実は「魔神少女3」は、前作までにいろいろと追加されて膨らんでしまったシステムを整頓しているのだ。強化スロットも前作はもっとややこしかったし、細かい追加要素を解禁できるシステムはなくなり、おまけのミニゲームもポーカーとルディミカル(音ゲー)のみに縮小された。

しかしテクニカルスキルは、食べ終えた苺のヘタより無価値に見えた(結局のところ通常攻撃しか使わない)し、「グラディウス」ライクな強化システムは項目が多すぎてややこしかった。「魔神少女3」から入るプレイヤーの存在を考えれば、このあたりを綺麗にするべきではあっただろう。

無論、一度クリアすると性能が違うとあるキャラクターで遊べるし、高難易度に挑戦する楽しみもあるし、条件を満たすことでイラストが見られるオマケ要素もあり、キャラクター同士の絡みが見られるアフタートークもあり、なんならタイムアタックを遊んでもいい。十二分なボリュームはあると言えるのだが、それでもやはり“規模が小さくなった”と思われても仕方のない部分もある。

続編としてのマンネリと起こせなかった革新

魔神少女 エピソード3 -勇者と愚者- レビュー
本作ではデイという人物が行おうとする復讐を止めることになるのだが、そのあたりの動機作りなども割と大雑把。ただし、キャラ同士の掛け合いはすべてフルボイスで、しかも登場キャラは十数人におよぶ。

しかしながら、この判断は合理的だ。確かに前作まではやり込み要素が死ぬほどあったのだが、そもそも2Dアクションとしてのクオリティがそこまで高くなかった。やり込み要素があっても通常のゲームプレイで嫌気が差してしまっては仕方ないわけで、基本的な質を高めるべきなのは確かである。

開発がエムツーになったことにより、「魔神少女3」の品質は向上した。特に良くなったのはメニューなどのUIで、安っぽい印象がなくなった。オートセーブも一瞬だしロードもまったく気にならない。ゲームシステムは整理整頓されたが、「魔神少女」シリーズとして必要なものはそのまま残している。とにもかくにもわかりやすくプレイしやすくなり、一歩進んだことは間違いないだろう。

とはいえ、完璧な2Dアクションになったかというとそういうわけでもない。相変わらずステージ構造には文句が出るし(上下の様子が見づらい画面構成なのに上下移動を強制させられる作りなど)、敵キャラクターの中には反則的な動きをするヤツがいる(トウモロコシは2Dアクションの教科書に載りそうなくらい悪い例だ)。もっと言えば、ボイスアクトにはクオリティのばらつきが見られる。これらに目を反らしたとしても、“悪くはないがとても良いわけではない”という程度であり、やはり1,000円を出して返ってくるそれなりの品質なのである。

魔神少女 エピソード3 -勇者と愚者- レビュー

「魔神少女3」に問題があるとすれば、それは目指す先が曖昧なところだ。いろいろと改めたのはいいが、結局のところ目の前の問題を片付けた程度である。そして、“低価格でそれなりのクオリティ”というものを軸にするにしても、関わる人数が増えたせいか価格はしっかりと上がっているわけだ。

本作は安くて無難で美少女がたっぷり出てくる「ロックマン」ライクな2Dアクションだ。悪くはない。しかし、3作目という存在でありながら大した革新はしていないし、これまで築いてきたブランドの軸も少しずつブレつつある。はたしてこのインディーゲームは、続編としての悩みをどう解決するのだろうか? その問題を次回作へと先送りしてしまったかのような一作だ。