大変だ! あのソニックが倒されてしまい、ドクター・エッグマンは世界の99%を制服してしまった。この危機的な状況をどうにかできるのはひとりしかいない。そう、プレイヤーであるあなたが自ら作るアバターキャラクターの力が必要なのだ! アバターは昔のソニックたちと力を合わせて、エッグマン軍に立ち向かう。様々なタイプのゲームプレイを融合させる「ソニックフォース」のコンセプトは秀逸だが、レベルデザインは不安定であり、そのポテンシャルは最大限に活かされていない。

キャラメイク機能は「ソニックフォース」の大きなセールスポイントで、本作の最も優れた機能のひとつだ。昔からのセガファンにとって、自分のソニックキャラクターが作れるのは夢のようだ。種族を選び、見た目をカスタマイズして、さらにいろいろな衣装を着させることができる。衣装はクールなもの(セガがテーマとなったギア、オシャレなサングラス、スポーツシューズなど)から滑稽なもの(ピエロのカツラ、シャッターシェイドのサングラス、レスリングベルトなど)まであり、ゲームを進めていくと新しいものがアンロックされていく。自分の作ったキャラクターがソニックの横でド派手なスタントを決め、ソニックとグータッチをしてはエッグマン軍のロボットに立ち向かう姿を見ていると純粋に楽しい気持ちになれた。

ソニックフォース レビュー

 

「ソニックフォース」には3つのタイプのステージがあり、どれもそのビジュアルデザインは素晴らしい(ステージの背景でエッグマンのぶっ飛んだロボットたちが暴れまわる姿を見てほしい)。サウンドトラックは過去作のリミックス、16ビットソニックを思い出させるもの、意図的にダサい90年代のポップ・ロックを彷彿とさせる曲があり、これも秀逸だ。

モダンとクラシックのソニックステージがあり、2Dでも3Dでもプレイヤーは高速でこれらを突っ走ることになる。筆者のように「ソニックマニア」を終えてから「ソニックフォース」をプレイしている人は、本作の操作系にはすぐに馴染めないだろう。なぜなら「ソニックマニア」のようにスムーズではないからで、特にクラシックソニックのステージはぎこちない。クラシックソニックのステージはメガドライブのソニックよりもずっとハイスピードだが、昔のように勢いをつけて坂道を上ることが難しくなっている。モダンソニックのステージはリニアなもので、スピードに重点をおいている。対するクラシックソニックはステージに多少の分岐点があり、複数の道を辿ることができる。どちらも楽しめる部分はあるが、クラシックソニックはスピードで明らかに劣り、違和感を覚えてしまう。

操作系は「ソニックマニア」ほどスムーズではない

3つ目のステージタイプはアバターキャラクターを操作する。アバターはウィスポンと呼ばれる武器を扱い、複数のウィスプパワーという特殊能力を発動できる。例えばライトニングというウィスプパワーでは光のムチを扱ってリングに沿ってライトダッシュが繰り出せるのに対して、ドリルはタメによる突進攻撃ができる。使っているウィスポンによってステージ攻略の流れは大きく変わるので、前のステージに戻って違うウィスポンを使うことで新しい発見がある。

 

3つのタイプのステージはどれも同じ問題を抱えており、これはソニックシリーズに前からある問題でもある。ステージを攻略していく上で危険を察知することが極めて困難なのだ。障害物のたくさん配置されたステージを高速で突っ走っているとどうしても見えなかった穴に落ちたり、気づかなかった敵にぶつかったりしてしまい、死ぬと自分のせいだとは思えないことが多い。2006年の「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」ほどアンフェアには感じないが、それでもこの問題はまだ改善されているとは言えない。全体的にステージのデザインも安定しておらず、レールの上をハイスピードで移動したり、水の滑り台を滑り降りたりといったスリリングな場面の次は、不器用に設計されたプラットフォームアクション場面や理不尽に配置された障害物にイライラさせられる。

他のソニックタイトルと比べるとステージはどれも短く、ゲームオーバーになることなく何度もやりなおせる。そのため、わかりにくいレベルデザインのせいで死んでもそこまでストレスにはならない。さらに、短いことによりステージは再訪しやすくもあり、新しいアイテムや衣装を求めてもう一度訪れることになるだろう。だが、その短さは同時にステージの欠点でもあり、面白いアイディアがあってもそのポテンシャルは最大限に活かされていない。クラシックソニックのステージは特に問題で、五本の指で数えられる程度のステージ数しかなく、どれもすぐに終わってしまうのでほとんどおまけのように感じられる。

「ソニックフォース」のボス戦はよくできているが、過去作の多くはボス戦が弱点であったことを思えばちょっと不思議だ。今作のボスはチャレンジングであると同時に長すぎず、巨大なヘビの上を走りながら戦うといった面白い設定のものもある。残念ながらボスの数は足りず、さらに言うとこれらもすぐに終わってしまうのでやはりインパクトにかける。

「ソニックフォース」のボス戦はよくできている

刺激的な場面が不足していることも問題だ。「ソニックフォース」のストーリーの序盤からは凄まじいものを期待してしまう。筆者はソニックたちがエッグマン軍に立ち向かっていく勇姿に熱くさせられた。だが、結局のところ、5、6時間のメインストーリーを通してストーリーもゲームプレイもその魅力が徐々に消え失せてしまう。序盤に登場するソニックの昔のライバルとも結局戦わないままゲームは終わってしまい、なんだか無駄に期待させられた気がしてならない。

ゲームをクリアした後はステージを再訪してスコアやタイムを更新したり、SOSミッションで他プレイヤーのアバターを救出して新しいギアと武器をゲットして、さらに隠しステージをアンロックすることもできる(どれも短いが)。だが、それでも本作のポテンシャルが活かしきれていない。ステージを増やし、刺激的なボス戦がもう少しあるだけでも違ったはずだ。