※以下にTVドラマ「ツイン・ピークス The Return」のネタバレが含まれる。


新しい「ツイン・ピークス The Return」では、物語の進展がとても遅いことを覚悟しておくのがベストだろう。今回の第5話は特にそうだった。あの像の足元に悲しげにつっ立っている姿を見てもわかるように、クーパーはまだすっかり別人だ。

だが、変化が起きているという興味深いヒントもある。クーパーはコーヒーへの愛を覚えているし(やったね!)、「捜査官」という言葉に反応する。そして彼が唯一、1度だけ昔に戻ったかのように見えた瞬間は、ダギーの同僚(トム・サイズモア)を嘘つき呼ばわりしたときだ。クーパーのFBI的な推理力が戻ってきたのだろうか? それとも別の何かが? この直前にトム・サイズモアの顔に怪しい緑色の光が見えたので、どちらのパターンもあり得るだろう。

IGN USのトーク番組「Channel Surfing」では「ジャコビー博士の出番はシャベルの配達を受け取り、そのシャベルを塗るシーンだけではないか」という話題が出て随分笑ったが、実際のところ、あのシャベルは何だったのかを比較的早く知ることができた。ジャコビー博士が陰謀説のウェブ番組のホストであるだけでなく、博士がその番組を利用して「ドクター・アンプの黄金のシャベル」を販売していることが判明した。ランダムだって? もちろんだ。面白いか? とても! この感じも、旧シリーズのこんな感じも、そしてネイディーンが再登場する様子も、私は大好きだ。ネイディーンは、まるでよく出来たカーテンレールのように静かに、しかし情熱的に、「ドクター・アンプ」の番組を観ている(そしてジェリー・ホーンも番組の熱心なファンの1人だ)。

 

今回復活を遂げた登場人物はネイディーンだけではない、マイク(あの「マイク」とは異なる)、ノーマ、ダブルRダイナー。そしてダブルRダイナーの復活によりシェリーの登場も増え、問題を抱えたシェリーの娘のベッキー(アマンダ・サイフリッド)も登場した。ベッキーは粘着質な若いヤク中(「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」や「ゲット・アウト」のランディ・ジョーンズ演)と関わりがある。

薬で高揚しているベッキーを、アマンダ・サイフリッドの大きな目が目立つようにしながら上から捉える(そしてアマンダ・サイフリッドがツイン・ピークスの世界にいることが普通に感じられる)ショットはとても抒情的で完璧にデヴィッド・リンチ的だ。

一方、悪いクーパーからの電話はそれにふさわしく不気味だ。アラームが鳴りすべてがめちゃくちゃになった時、彼は脱出するかのように見えた。しかし実際はメッセージを受信しただけだった。それは、誰かに宛てた「牛が月を飛び越えた」というものだ。

悪いクーパーに関して興味深かったのは、その前の出来事で、クーパーが鏡を覗きこみ、「お前はまだ俺と一緒にいる。よろしい」と宣言するところだ。オリジナル版の「ツイン・ピークス」の最後で、ボブがクーパーのドッペルゲンガーと一緒に狂ったように笑い、次いでクーパーが鏡を見るとボブが見返す、というくだりのフラッシュバックも登場した。この長い年月、ファンたちは「僕らの」クーパーがボブに乗っ取られたと思っていた。しかし今回最初の数エピソードでわかったことは、我々があのフィナーレで見たクーパーには、ボブとクーパーのドッペルゲンガーという2つの異なる人格がすでに示されていたということだ。これはデヴィッド・リンチとフロストが以前から考えていたことなのか、それともフランク・シルヴァが亡くなったことで新たに計画されたのか。答えは謎だが、少なくとも27年前に見た内容と一致している。なぜなら、そう、あのドッペルゲンガーはボブと共にブラックロッジにいたからだ。つまり、このエピソードで悪いクーパーが口にしたセリフは、未だに共存しているボブに向けられているのだ。そして気になるのは、シルヴァ亡き今ボブはどう描かれるのか(描かれるとすれば)だが、「別の場所から来た男」の場所には恐ろしい木があったし、選択肢は無数だ!

新しい登場人物としては、ロバート・ネッパ―とジェームズ・ベルーシが、あの「ミスター・ジャックポット」が大金をゲットしたカジノから来た2人の悪党を演じている。これが物語のどこにつながるのか、リンチとフロストが選んだ伏線は何なのか、そしてこの2人は最終的にクーパーと対面するのか(クーパーにとってはかなり悪い話だ)、それとも、新しい登場人物と共に新しい話の筋を辿ることになるのだろうか。まだわからないが、新シリーズが盛りだくさんで、舞台が街の中でさえないので、本当につながっている部分は何なのかがますます見通せない。例えばダギーの車を盗もうとした犯人は、単なる適当なゴロツキで(うち2人はふっとばされる)、それ以上重要な役割もなく、ヤク中でも誰かの息子でもない。しかし、それがどうなるか、今のところは何もわからない。

  • では、箇条書きに入ろう。たくさんあるが、まずは……この写真の女子たちはなんて素晴らしくツイン・ピークス的なんだろう!(中央のエイミー・シールズはキャストのリストの中で特に注目されており、「この役はどれくらい重要なのか」という疑問がもたげる)

ツイン・ピークス The Return
エイミー・シールズとその仲間たち
  • 31歳のアマンダ・サイフリッドが、46歳のメッチェン・アミックの娘を演じていること自体かなりばかげているが、これはデイヴィッド・リンチ作品だし(単に面白いという理由でやりかねない)、アマンダ・サイフリッドが実際より若い役を演じるのは典型的にハリウッドらしくもある。ただ、まだわからないのはベッキーの父親だ。レオか?ボビーか?それとも?
  • マイクはビジネスマンとして成功しているようだ。スティーブンと彼の最低な経歴を、適切な権威をもって無理なく叱れるのだから。旧友ボビーと同様にマイクは信頼されるコミュニティメンバーになってしまった。
  • ロバート・フォスターは偉大なる無表情な表現家で、フランクとその妻ドリスのシーンでは素晴らしくコミカルな効果を2度も発揮している
  • フランクが電話でハリーと話すが、こちらからはハリーは見えも聞こえもしない。これは奇妙だ。マイケル・オントキーンがなぜ戻ってこないだろうか。少し怪しい。しかし彼が戻らない以上、このように一方的な通話が普通よりも注目を浴びている。特に、悪いクーパーがフィリップ・ジョーンズかもしれないし、そうでないかもしれない人物と話しているときがそうだ(デヴィット・ボウイでないのは明らかだが)。
  • 第5話の冒頭とエンディングは、ブエノスアイレスが舞台で、わかりにくい。この女性は誰だろう?続いて小さな物体に変化するこの変な箱は何?ブエノスアイレス自体は、ツイン・ピークスで新しい場所ではない。「ローラ・パーマー最期の7日間」でフィリップ・ジェフリーズが消えた場所であり、幻のカットシーン「The Missing Pieces」では、ジェフリーズがブエノスアイレスでさらに奇妙なテレポーテーションをしている。
  • ジェフリーズの場合とは異なり、我々は、ブリッグスは死んだと知らされていた。しかし、政府がその16番目の「ヒット」がブリッグスにこの25年間あたっていたこともわかった。デヴィッド・ボウイとドン・S・デイヴィスはもういないが、リンチとフロストはこの2人の登場人物に迷わず重要な意味を与えることができるし、彼らが生き返る可能性もある。
  • ジェイドがグレートノーザンホテルの鍵を元の場所に送り返す。本当のクーパーが彼を知っている誰かに発見されるための扉を開けるかのようだ。
  • バン・バン・バー内のランダムに不気味な煙の主は、クレジットによると、「リチャード・ホーン」。これがジェリーの息子か、オードリーの息子か、それとも別の誰かの息子なのか。それは彼に触れてはいけない感じがする理由と少し関係がある。女性に対してこれほどオープンに極悪で暴力的なの奴は、保安官事務所の我らが仲間との折り合いが悪かろう。リチャードの正体がどれほど明かされるのか、今後に注目だ。
  • リチャードのタバコのブランドは「モーリー」だ。Xファイルの大きなイースターエッグだと見る人もいるだろう(タバコを吸う男が選ぶブランドだった)。実はこのモーリーはハリウッド世界にしかない架空のブランドで、1960年の「サイコ」以来、互いに関連のないテレビ番組や映画に数えきれないほど登場している。
  • 本当に大勢の懐かしい顔ぶれが!アーニー・ハドソン、エレナ・サティン!そしてあの立派なキャスト一覧の中に昨年は見つけられなかったジェーン・レヴィも。この人々が重要な役割を担っているのかはまだわからない。しかし、ハドソン演じるコロネルは重要そうな気がするし、ジェーン・レヴィ演じる人物は少なくともツイン・ピークスの世界そのものにとって重要だ。
  • 最初の数回のエピソードでは、バン・バン・バーでのパフォーマンスで終わるというパターンを作ったかのようだった。そこで今回のエピソードにも良い感じでそう予想していたが、バン・バン・バーの場面ではパフォーマンスがなく、リチャードと女子に焦点が当たっていた。しかも今回のエピソードは、この場面が最後でもなかった!