私の世代はクラッシュ・バンディクーと共にあったと言っても過言ではない。「宇宙初の奥スクロールアクションゲーム」という触れ込みで、軽快なダンスや音楽があしらわれたCMは一世を風靡。PlayStationの顔となった奇妙な二足歩行の茶色いバンディクーは毎年冬に訪れ、当時の小学生たちを夢中にさせたイカしたヒーローだった。クラッシュがノーティードッグの手を離れた後は様々な変遷を経て、多種多様な企業に保護されて来た。しかし日本におけるシリーズの扱いが雑になってきたため、最近では忘れらたヒーローとしてその身をゲーム業界の影に隠し、再び輝く日を待ち続けていた。

今作は世界中で最も支持され、多くの人からリメイクの声が多かったノーティードッグによる初期三部作をアクティビジョンが手がけるということで発表時から大きな期待を受けていた。

日本版で慣れ親しんだ人にとっては物足りなく感じるポイントも多い

初期三部作は日本版と海外版で大きな違いがあったが、今回のリメイクは海外版を準拠にしたものだ。そのため日本版で慣れ親しんだ人にとっては物足りなく感じるポイントも多い。それもそのはず旧作では、日本版のためにクラッシュ専門のローカライズチームが手の込んだ作業を行ない、たという背景があるのだ。そのため、今回のリメイク版には疑問に感じる部分が多々見られた。しかし作品からは熱い原作版へのリスペクトが大きく感じられるため、一概に否定しきれない。

起動するとコルテックスの声で「アクティビジョン・ブリザード」と社名を読み上げた後、クラッシュのポリゴングラフィックが一新されるという小ネタは非常にユニークで、かつてプレイヤーの心を掴むことに成功している。その後「クラッシュ・バンディクー1」(以下数字で表記)の「めざめのビーチ」「オープニングBGM」が流れるとまるで実家に帰ったような安心感を覚える。

それにしても今作には大きく分けて4点改善して欲しいポイントが有る。最初のひとつは多くの人が指摘しているようにジャンプ周りの操作だ。通常ジャンプを多用するアクションゲームではジャンプ中の制御には細心の注意を払うべきなのだが、このゲームでは慣性が強く働き、ブレーキ力が弱いため足場の狭いステージでのジャンプ移動に大変苦労する。旧作のジャンプ移動はブレーキが強く加速力もあるので初心者でも直感でとっつきやすい仕様であったため大して気にならなかった。

クラッシュ

加えて着地ポイントが曖昧なため、このゲームの不便さや理不尽さを加速させている。今作特に目についたのがクラッシュファンの間で語り継がれる難関名ステージ「カメカメジャンプ」。このステージは道のほとんどが穴か崩れる床で構成され、助走が付けられないジャンプを迫られる。そこで問題の着地の仕様だが、旧作のクラッシュでは救済措置としてキャラクターの影が少しでも触れていればなんとか着地できることが出来たが、今作は本体がちゃんと足場に乗っていなければ容赦なくクラッシュを奈落の底にずり落ちてしまう。

カジュアルなゲームプレイが大きくそれてシビアなゲームとなってしまった

このずり落ち現状は「1」で多くみられ、スライディングからのハイジャンプのテクニックがある「2」や、ダブルジャンプ、竜巻スピンアタックが実装された「3」ではそこまで体感することはない。だが基本的にモーションや着地の仕様が同様であるため、同種の事故を起こしてしまう。

2点目は当たり判定や攻撃モーションの不具合だ。これは「2」で特に体感した。敵の距離感が大事な本作はいかに敵をギリギリまで引きつけてスピンアタックで撃退するかが醍醐味。だが本作はスピンアタックのボタンを押した後にコンマ数秒の間があり、これによって敵と接触してしまい意図しない死を迎えることが何度かあった。これに伴い敵の当たり判定も問題になってくる。今作は当たり判定を厳密にしすぎたせいか、踏みつけて撃退する場合も確実に敵の中心を狙わなければならなくなったり、スピンアタックで撃退する際も確実に接触しなければ返り討ちに合ったり、元のカジュアルなゲームプレイが大きくそれてシビアなゲームとなってしまった。

海外版をただそのまま日本語化した印象

そして多くの日本人ファンを落胆させたのが今回のローカライズだ。先述したように旧作ではクラッシュ専門のローカライズチームが頑張っていたため、海外版とはまるで別のゲームのような仕上がりとなっていたのだが、今作では海外版をただそのまま日本語化した印象だ。そのため旧作を知っている人からすれば手抜きと思われてしまう部分が多く見られた。

特にゲーム中に表示される文字のフォント、ステージ前のロード中に表示されるヒント、そして爆弾箱とニトロ箱のグラフィックのローカライズには問題を感じる。旧作のフォントは海外版の英字フォントが独特な作りをしていたため、これに合わせた日本語フォントが制作された。今作では文字の色合いがそれっぽく塗られているだけに留まっている。これに関しては筆者のこだわりの問題で評価点としては考慮しなくても良いだろう。

クラッシュ
的はずれなヒントも相まってローカライズの手抜き感は否めない

だがロード中のヒントは問題だ。ヒントは初見プレイヤーにはヒントに及ばないトンチンカンな内容のものが存在したり、「1」のステージ2のロード中に出る「ニトロ箱はスピンせずに飛び乗ったほうがいい」というヒントに関しては、従来の赤色の爆弾箱が「TNT」と表記され、緑色の「ニトロ箱」が「NITRO」と表示されている。これでそのまま「ニトロ箱」に飛び乗ったら爆死するわけで、誤解を招く最悪のヒントだ。これに拍車をかけるように「2」や「3」で有用なヒントをボイス付きでわかりやすく与えてくれたアクアクが一切喋らないので今作のヒントの質に疑問を感じることになる。

さらに指摘したい点は爆弾箱とニトロ箱のグラフィックだ。本作は漢字を使用せず全てひらがなで表記し、クラッシュ・バンディクーの世界を幅広い人に楽しめるように努力している。だが、これを覆すように爆弾箱には「TNT」ニトロ箱には「NITRO」と海外のグラフィックをそのまま採用している。さらに先程指摘した的はずれなヒントも相まってローカライズの手抜き感は否めない。旧作の爆弾箱の爆弾マークをなぜ採用できなかったのか甚だ疑問だ。

最後に早急にパッチを当てて欲しい致命的な不具合が「3」のバイクステージ。バイクステージで曲がろうとすると突如曲がれず、コースアウトするまでそのまま直進してしまうという不具合が多々発生する。特に14ステージの「じわれのハイウェイをゴー」でS字カーブを走行中、急に制御できなくなることが多かった。何度やっても再現できてしまうのでおそらく何か問題があるだろう。ジャンプの制御や着地の判定同様、パッチを当てて改善をして欲しいところだ。

クラッシュ
妹のココがほぼクラッシュの能力を引き継いで全ステージで遊べるようになった

さてここまでネガティブなことばかり指摘してきたが、本作にも評価するべきポイントはもちろんある。先程あげたひらがなオンリーの文字表記は幅広い層にクラッシュを知ってもらう最良の方法だろう。また「1」のタウナステージに登場するタウナは旧作では囚われの身であり、ステージクリア後には謎のフェードアウトをしていたが、今作ではタウナをコルテックスが拐っていく演出が入るようになった。かつてのゲームに新たな解釈を盛り込む表現に違和感なく成功している。

また「カメカメジャンプ」のステージ最初に手前の方角にある見えない床の上にりんごを配置してパーフェクトクリアのための導線を作ったり、「3」の隠しステージがわかりやすいように示唆されたり、随所に遊びやすくする工夫はなされている。

さらに意外にも楽しめたのが「3」で導入されたタイムアタックが「1」や「2」でも体験できるようになり、さらに妹のココがほぼクラッシュの能力を引き継いで全ステージで遊べるようになったのも女性ファンの裾野を広げる事に成功できたと思う。