僕は1年近くIGN JAPANに勤めて、これまでに14本のレビューを担当してきた。だが、「ウルトラストリートファイターII ザ・ファイナルチャレンジャーズ(ウルII)」ほどレビューしにくいタイトルに出会ったのは初めてだ。特に点数はなかなかつけられるものではない。

「ウルII」ほどレビューしにくいタイトルに出会ったのは初めてだ。

「ストリートファイターII」は間違いなく傑作で、初代がリリースされた当時にレビューすれば満点をつけるべきだと思う。さすがに昨今の格闘ゲームと比べると少し原始的だが、ストIIの究極のアップグレード版に当たるウルIIは今遊んでも十分に楽しい。だが、昔の傑作を再配信するだけで、それはどこまで評価に値するのだろうか?

次に値段の問題がある。ウルIIの値段はパッケージ版4990円(税別)、ダウンロード版4620円(税別)だ。細かいことを別にすれば90年代にも遊べたゲームに――いくら傑作であるとはいえ――この値段はやはり高すぎる。だが、値段設定はどこまで評価に響かせるべきなの?

まだまだウルIIをレビューしにくいゲームにする問題がある。現時点ではNintendo Switchには格ゲーを遊ぶのに適したコントローラーがない。Joy-ConでもProコントローラーでも遊べないことはないが、ガチでやりたい人にとってこれは不十分だ。もちろん、ウルII自体の問題ではない。だが、ゲームに影響が出る以上、まったく無視して評価するわけにもいかない。

一部のモードの出来の悪さも気になる。もちろん欠点はゲームの評価を下げてしかるべきである。だが、そのモードがおまけでしかなく、完全に無視できるものであるならば、あまり厳しく評価に響かせるのもちょっとアンフェアなのかもしれない。まあ、そんなモードは最初から入れなければいい、と言われればそれまでだが……。

ウルトラストリートファイターII
「より優しいレビュアーに会いに行く!」

懐かしいと同時に新しいタイムレスな傑作

ウルIIが弊誌の副編集長・今井宛てに届いたのが金曜日だった。今井は外出していたが、僕は待ちきれず彼の机の上にあったその小包を開け、さっそくウルIIをプレイしはじめた。僕は昔からのストIIっこで、新作が出ると聞いたときからずっと楽しみに待っていた。週末は用事がいっぱいつまっていたけれど、それでも10時間以上はプレイした。はっきり言って、僕にとっては今のところSwitchの最も魅力的なマルチプレイタイトルだ。もちろん、マリオカートを忘れているわけではない。

僕にとっては今のところSwitchの最も魅力的なマルチプレイタイトルだ。

初代ストIIは本当にすごいなあと思う。格ゲーの元祖にして究極の格ゲーだ。攻撃・ガード・投げの絶妙な力関係。弱・中・強の通常攻撃、それに飛び道具や対空の必殺技。今の格闘ゲームにおける基本がほとんどすべて入っていると思うと本当に恐ろしい。キャラクターのバランスに問題があるとはいえ、ストIIシリーズが今でも積極的にプレイされていることを思えば、まさにタイムレスな傑作と言える。だが、ウルIIはそんな伝説的なゲームに何かの付加価値を与えているだろうか?

ウルIIは昔ながらのドット絵とサウンドの「クラシックジェネレーション」、または2008年に海外で発売した「Super Street Fighter II Turbo HD Remix」をベースにしたグラフィックとサウンドの「ニュージェネレーション」でプレイできる。Udon Entertainmentというカナダのアートスタジオによる新しいグラフィックスタイルは人を選ぶが、原作に忠実ではある。個人的には背景にいるNPCの顔がどことなく海外のアニメっぽいのが印象的で、若干世界観のミスマッチを感じるとは言え、興味深い。

ウルトラストリートファイターII

グラフィックとサウンドは「オプション」の「モード設定」でしか切り替えることができない。せめて試合と試合の間に切り替えられるようにしてほしかった。オンラインで盛り上がっている時、気分転換にモードを変えたければ一旦終了してオプション画面に戻るしかないのが現状である。細かいことのようだが、ウルIIには他にもちょっとした見落としがあり、全体的にもう少し気配りをしてほしかった。例えば「ギャラリー」では書籍「ストリートファイターアートワークス 覇」に収録されたアートを閲覧できる。非常に高解像度で拡大と縮小も思う存分にできるのでファンにとっては楽しいコンテンツだ。だが、なぜか左上にはずっと「ーヘルプ」のUIが表示されて、消すことはできない(時間が経つと自然に消えるが)。初めて閲覧するときに表示されるのは丁寧だが、毎回表示する必要はどこにあるのだろうか?

ウルトラストリートファイターII

全体的な気配り・努力の足りなさ

ステージ選択ではリュウのステージがデフォルトになっている。対戦で盛り上がっている時、早くリベンジがしたくて、ほとんどの人はAボタンを連打するだろう。結果、ネット対戦の半分近くの試合はリュウのステージで展開する。ランダムがデフォルトになっていれば、カジュアル層もより楽しかったはずだ。ストIIを昔からプレイしている僕だってせっかくある16ステージをそれぞれ同じくらい見たい。

ウルトラストリートファイターII

キャラクターの色を細かく編集できる「カラーエディット」が新しく盛り込まれている。複数のパーツの色を細かく指定できるので、自分だけのリュウやベガが作れる。だが、ここもまたサービス精神が足りない。Switchの携帯モードではタッチ操作で色をスムーズに変更できるが、TVモードだとそうはいかない。アナログスティックをホールドしてもカーソルはほとんど加速しないので、非常にやりづらい。

ウルトラストリートファイターII

カラーエディットができるようになったことは嬉しくないわけではない。だが、5000円くらいする作品なのだからもう少し求めたい。大変なのかもしれないけれど、せめて各キャラクターにつき新コスチュームが1着あってもよかったと思う。新キャラに関してももう少し努力してほしかった。「殺意の波動に目覚めたリュウ」と「洗脳されたケン」はストIIシリーズにおいて初めて登場しているとはいえ、道着キャラクターなのであまり新鮮味はない。そして、僕は気づいてしまった。カラーエディットモードでは通常のリュウとケンを2人の新キャラと同じ見た目に仕上げられる。よって、デザイン的な意味でも残念と言わざるを得ない。完全新キャラクターではなくても、道着キャラ以外の誰かがストIIシリーズにデビューしてもよかったのではないだろうか。

ウルトラストリートファイターII
道着キャラ多し。

新しく追加されたステージもない。これまでのステージはどれも世界観が濃厚で僕は応援してくれるNPCまで大好きだが、やはりここも少し頑張って新しいステージを作るべきだった。

ストIIがオンラインに! 後はコントローラーだけだ!

ウルトラストリートファイターII

しかしそれにしてもオンライン対戦は熱い! 日本で発売されたバージョンで、オンラインでストIIが楽しめるのは僕の知る限り初めてである。

負けたときは自分とSwitchのコントローラーたちのせいにするしかない。

負けると思いっきり机を叩いてしまうし、勝てばガッツポーズをする。ウルIIには前後のダッシュ(ステップ)や受け身といった、昨今の格ゲーでは当たり前になってきたような要素が新しく導入されていないので極めて地味な駆け引きになりがちだが、だからこそ妙に緊張感がある。とはいえ、投げ抜け(通常投げから身を守る技)など、時代に合わせて追加された要素もないわけではない。90年代の格ゲーをしているノスタルジックな感触が味わえると同時に、実はいろいろと調整されている。

ウルトラストリートファイターII

ランクマッチはストIVと似てPlayer PointとBattle Pointがあり、これを元に自分とレベルの近いプレイヤーと組まされる。だが、なぜか同じ相手との再戦は2回までとなっている。「最初は勝てなくても対戦を繰り返すと相手の行動パターンが読めるようになり、勝つ」というのは格ゲーお決まりの流れだが、本作では相手をかなり早く読まないともう手遅れだ。なぜこの仕様があるかはわからないが、実を言うと結構気に入っている。「これで負けても次勝てばいいや」という発想にまずならないからである。一戦一戦、気を引き締めて戦うことになるだろう。お互いネット環境さえしっかりしていればラグも少なく、快適だ。負けたときは自分とSwitchのコントローラーたちのせいにするしかない。

そして、コントローラーたちを攻めることになるのはほぼ間違いないだろう。まず、Switch向けのアーケードコントローラー、格闘ゲーム専用パッドは現時点ではまだ発売されていない。Joy-ConまたはProコントローラーでプレイすることになるが、格ゲーをプレイするのに理想的なものではない。どちらも十字ボタンが最大の問題だ。僕は特にProコントローラーの高くでっぱっている十字ボタンが苦手で、素早く斜め上にジャンプしたり、しゃがみガードしたりするのはJoy-Conの方向ボタンの方がまだやりやすかった。ところが、これでは必殺技の入力が難しいので、僕は試合の途中でアナログスティックと矢印ボタンを切り替えながら戦うようにしている。極めて無理のあるプレイスタイルであることは承知しているし、誤動作は発生するし、切り替えるときに時間のロスもある。コマンド入力が前より優しく、だいぶ甘くなっている点は不幸中の幸いだ。だが、それでも早くちゃんとしたコントローラーがほしい。

カジュアルな遊びとしてのウルII

ウルトラストリートファイターII

Joy-Con片方ずつでプレイすればなおさら操作に無理を感じる。だが、ここまで来たら別物として楽しむべきだろう。理想の形じゃなくても、すぐに誰かを誘って一緒にプレイできるのはやはり魅力的だ。しかし、Joy-Conは右と左とでアナログスティックの位置が異なり、左のJoy-Conが圧倒的に有利なので、素人同士でも真剣勝負には向かない。

「ストリートファイター」は対戦が最大の魅力だが、今回はなんと協力プレイもある。「バディファイト」ではプレイヤー2人が同時にCPUと対戦できる。そこまで真剣に遊ぶモードではないが、難易度を高くすればネタとして楽しめる。特に相手の両側に立って、左右からぶちのめすシーンはいじめとしか言いようがなく、笑いを誘う。仲間が離れたところから飛び道具を放って、自分が投げにいくといった戦略もあり、それなりに楽しいモードではある。だが、対戦するCPUは決まっており、全部で4戦しかない。もう少し掘り下げてもよかったかなと思う。

ウルトラストリートファイターII

「放て! 波Do拳」というモーションコントロールを採用したモードもあるが、これについてはあまり多くを語るつもりはない。プレイヤーはリュウとなって、一人称視点でリュウの主な必殺技を繰り出して迫りくるシャドルー兵を倒さなければならない。Wii初期のモーションコントロールを彷彿とさせるような酷い出来で、これはとにかく触ってはいけないモードだ。最初から一度も起動しないで、存在しないものとして扱ってほしい。あなたのためにもウルIIのためにも。