スプラトゥーン2 レビュー 

Nintendo Switchが発表された際、「スプラトゥーン」の新たなタイトルが登場すると映像で明らかになった。このころタイトルや詳細などは発表されておらず、私はてっきりアップグレード版が登場するのだと思っていた。しかしその後に発表されたのは「スプラトゥーン2」、新作だったのである。

「スプラトゥーン2」は、簡単に言えば前作の要素をさらにパワーアップさせた対戦アクションゲームだ。インクリング(イカ)と呼ばれる生物たちがインクを塗り合う4対4のバトルを繰り広げるという基本は変わらない。そしてどのように進歩したかを書くと、前作に比べるとここが良くなっただの前は不満だったここが改善されただの、とにかく比較して良くなったことばかりを書くことになる。いや、そうなってしまうのだ。

そうなると「やはりアップグレード版では?」と思う人もいるかもしれないが、それは違う。「スプラトゥーン2」は確かに前作とコンセプトは同じなのだが、イチから作り直したと言えるほどなのである。そしてそれこそが、本作を新作として発売した理由となるのだ。

新しくなった街、ヒーローモード、そしてシャケしばきの快感を教えてくれる協力プレイモード

スプラトゥーン2

「スプラトゥーン2」はすべてが新しくなっている。Switchで登場するということでグラフィックもより綺麗になっており、イカたちのバトルはいっそうなめらかに見える。一見するとそこまで変わっていないようにも思えるが、特にサングラスの映り込みやインクの粘度に違いを見て取れることだろう。

各モードを繋ぐハブとなる街は「ハイカラスクウェア」になり、ステージ情報などを通知するハイカラニュースを担当するユニットは「テンタクルズ」に、と変わっている部分もあるが、キャラクターや各種要素は基本的に前作を引き継いでいるのでこれまでのファンも安心していいだろう。各種BGMも新しい流行を取り入れてはいるものの、重要な楽曲やフレーズはそのままである。

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対戦モードのみならず、オクタリアン(タコ)と戦う「ヒーローモード」も一新された。このモードはひとりでバトルの練習をするようなものだが、きちんと物語があり、独自の仕掛けやステージ、タコの世界を反映したBGMなども用意されている。ナビゲーターはアイドルユニット「シオカラーズ」の片割れであるホタル。盗まれてしまったオオデンチナマズを探すため、全32ステージを戦い抜いていくことになる。

ヒーローモードはチュートリアルに近い。チュートリアルとして見るとかなり豪華なのだが、たとえばこれがダウンロードタイトルとして販売されたら物足りない

ヒーローモードの新たな要素としては、さまざまなブキが使える点が挙げられるだろう。前作では最もオーソドックスなシューターというブキのみが使えたが(ただしamiiboがあれば他のブキで遊ぶことはできた)、マニューバーやパラシェルターなど新ブキを含む9種類のブキが使えるようになっている。また、ラインの上をカッコよく乗って行けるライドレールや吹き戻しそっくりなピロピロといった仕掛け、ボウリングの玉に体を隠したタコストライクや逃げ回るスタコラーなど、ヒーローを倒そうとしているのか笑わせようとしているのかわからないタコや仕掛けがたくさん襲ってくる。

とはいえ、やはりヒーローモードはチュートリアルに近い。チュートリアルとして見るとかなり豪華なのだが、たとえばこれがダウンロードタイトルとして販売されたら物足りないという評価がつくことだろう。やはり本作のメインは対戦であり、そこへプレイヤーを無理なく導入するための内容なのだ。

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新要素といえば、協力プレイモード「サーモンラン」も忘れてはならない。このモードでは2~4人のプレイヤーと協力してシャケと戦い、金イクラなるアイテムを回収するイクラ狩りのバイトを行う。うまくクリアできればバトルで役立つ報酬を手に入れることができる。

さまざまなオオモノシャケなるボス敵が登場するのみならず、潮の満ち引きなどでイベントが発生することも特徴。うまくなっていけばいくほど難易度が上昇して歯ごたえが増していく。このモードは少人数でもプレイできるうえ、ローカル通信でも気軽に遊ぶことができるし、対戦があまり得意でない人も遊びやすくなっているだろう。

あくまでバトルの息抜きにシャケをシバくという程度の立ち位置

シャケからイクラを強奪するのは素直に楽しいものの、やはりこれもメインディッシュではない。発売直後は特例でほとんどの時間で遊べるようになっている本モードだが、基本的には時間限定で遊べるものである。あくまでバトルの息抜きにシャケをシバくという程度の立ち位置だ(息抜きに仕事をするというあたりよくわからないが、イカは享楽的らしいのでそういう生き方なのかもしれない)。

ブキ、ギアパワー、マッチングと抜本的な調整が行われたバトル

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そして当然ながら、本作のメインディッシュとなるバトルは新たな刺激を連れて帰ってきている。バトルルールは前作から引き継いでおり、地面を塗った量で勝敗を競うナワバリバトルをはじめ、ガチマッチと呼ばれる3種のルールが存在する。

ルールは基本的に前作と同じだが、特にガチマッチはより親切になっている。ステージ中央にあるエリアを奪い合うガチエリアは塗り状況がわかりやすくなっており、ヤグラに乗ってゴールを目指すガチヤグラは防衛ポイントにカンモン(関門)が設置。ガチホコを相手陣地に運ぶガチホコバトルは時間経過によるガチホコのリセットが設定されたりと、前作でわかりづらかった、もしくは問題があった箇所が正されている。

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「海女美術大学」でのバトルの様子
インクレールやスポンジという新たな仕掛けが用意されており、見た目にも印象的であり戦略も奥深くなった

バトルのステージはすべて一新されており、夏のフェスを感じさせる「ガンガゼ野外音楽堂」や未来のアーティストたちが通う「海女美術大学」は各種オブジェクトにもこだわられている。前作にも登場した「タチウオパーキング」や「ホッケふ頭」といったものは大幅に改修。インクレールやスポンジという新たな仕掛けが用意されており、見た目にも印象的であり戦略も奥深くなった。

チームを組んでガチマッチを遊ぶモードも「タッグマッチ」から「リーグマッチ」と改定され、ランキングに挑戦しメダルを獲得するという要素が追加。また、時折開催されるイベント「フェス」もかなり変わった。フェスはふたつの陣営に別れてナワバリバトルを繰り広げるというお祭りなのだが、製品版では今のところ開催されていない。ただし「スプラトゥーン2 前夜祭」で一部を体験できたので、このイベントに関しては当時のプレイレポートをご覧いただきたい。

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そして、バトルに使うブキのことを忘れてはならない。二丁拳銃でカッコよく動き回れるマニューバーが追加されているほか、後日実施されるアップデートではパラシェルターという傘型ショットガンが登場予定だ。マニューバーはインクの噴射でスライドという高速移動ができ、撃ち合いの途中に相手の背後を取るというクールなプレイが可能になる。ただし、最初のほうは焦ってスライドし水へ落ちて醜態を晒すことになるだろう。

前作で置物になっていたブキたちも、ついに陽の光を浴びる時が来たのかもしれない

ブキに関するバランス調整もかなり大幅に手を加えられている。たとえば「プロモデラーMG」というブキは前作ではほとんど誰も使っていなかったのだが、本作では射撃がかなり当てやすくなり、しっかりと長所が感じ取れるようになっている。前作で置物になっていたブキたちも、ついに陽の光を浴びる時が来たのかもしれない。

イカたちの身体能力をパワーアップさせるギアパワーに関しても大きな調整が入った。前作の終盤で猛威を奮った「復活時間短縮」は相手を倒せなかった時にのみ復活時間が減るようになり、バランス調整において悩みのタネだった「攻撃力アップ」「防御力アップ」は削除、攻撃を当てると相手が隠れてもシルエットが見える「サーマルインク」など新ギアパワーも追加されている。

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最も大きなバランス調整はスペシャルウェポンであろう。これはインクを一定量塗ると使えるようになる特殊なブキで、劣勢時でも逆転の起点を作り出せるというものだ。スペシャルウェポンはすべて一新されており、味方とタイミングを合わせるとより効果が発揮されるものに切り替わった。前作に登場した「ダイオウイカ」など、プレイヤーが無敵になるスペシャルウェポンに対してウンザリしていた人には朗報だろう。

細かいところだが、マッチングの調整も忘れてはならない。フェスでは「フェスパワー」、ガチマッチでは「ガチパワー」というレーティング制度が導入されており、なるべく近い腕前の人同士が当たりやすくなっているそうだ。とはいえ発売直後はすべてのプレイヤーが同じ場所に押し込められるという混沌とした状況なので、これに関してはこれからの動向を見てからでないとなんとも判断し難いところだ。

前作以上にチームプレイが重要になっており、味方と息を合わせることや味方のサポートをすることが大事

バトルの基本は同じものの、これら調整により内容は大きく異なっている。前作以上にチームプレイが重要になっており、味方と息を合わせることや味方のサポートをすることが大事で、チーム対戦ゲームとして改めて組み立て直された。プレイ感覚はかなり異なっており、新しいブキを手に入れるたびについそれを試してみたくなるほどだ。

なぜバトルのバランスを根本から変えたのか、前作のバランス調整から振り返る

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前作「スプラトゥーン」でのバトルの様子

「スプラトゥーン2」は感覚的に見てしまえば前作からそこまで変化がないのだが、最も重要なバトルの根幹を改めて立て直そうとしているのである。なぜそうなったのか、前作「スプラトゥーン」のゲームバランスの歴史を振り返ってみよう。

「スプラトゥーン」の発売直後は、完全新作ということで誰もが状況をよく把握できていなかった。ナワバリバトルでは「プロモデラーRG」(後にまったくと言っていいほど使われなくなったブキ)が強いと言われた牧歌的な時代であり、スペシャルウェポン「トルネード」が強すぎるという今からすれば失笑ものの意見もまかり通っていた。

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前作「スプラトゥーン」の最初期に「スプラローラー」を使用している場面。このころは適当に転がしているだけで相手を轢いて倒すことができた

しかし、そのうちローラー系のブキ「スプラローラーコラボ」が強いと言われるようになる。ほとんどのプレイヤーがまともに地面を塗らないため、インクの中を潜んで不意打ちするローラーがかなり暴れたのだ。また、塗らないと相手のスペシャルウェポン「ダイオウイカ」でやられやすくなってしまうためこれが強く見えたのか、文句に近い意見が散見された。

その後に追加された「.96ガロンデコ」というブキもダイオウイカを使えてこれもかなり活躍したため、スプラローラーやダイオウイカは次第にアップデートで下方修正を受けるようになっていく。ダイオウイカはまだそれなりの位置に収まったが、スプラローラーコラボは最終的に使っている人を見るほうが珍しくなるほどひどい調整を受けてしまった。今でもあのブキには同情する。

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前作「スプラトゥーン」で存在した攻撃力アップのギア一例

Ver.2.2.0アップデートではブキのバランス調整が行われたほか、前述の「攻撃力アップ」と「防御力アップ」のギアパワーの力関係が変わる。これ以前のバージョンでは攻撃力アップが強すぎたうえ、長射程ブキのチャージャーと相性が良すぎた。そのためにテコ入れしたと思われるのだが、今度は逆に防御力アップのほうが圧倒的優位になってしまう。

こうしたアップデートである程度の流行は変化したが、それでも特定ブキに対する人気は高かった。そのためVer.2.7.0アップデートでは、“再スタート時のブキごとのスペシャル減少量”が追加されるようになる。やられた時はスペシャルウェポンを使うためのメーターが減るのだが、これはその減少量をブキごとに決めようというものである。簡単にいえば特定のブキに対する人気の一極集中を抑えようとしたのだろうが、結局のところ人気になるブキを違うものに変えるだけにしかならなかった。

「スプラトゥーン」のアップデートは新モード・ブキ・ステージが追加されることから皆に歓迎されていたが、このようにゲームバランスとしてはかなり苦労していたであろうことがわかる

スペシャル減少量が少なく設定されたブキは確かにあまり人気のないものが多かったが、性能自体は良いものが多かった。このせいで今度はそちらに人気が集まり、さらにやられた時のリスクが少ないことから復活時間短縮のギアパワーと合わせて特攻しまくり死にまくりの戦術がメジャーと化してしまう。塗って戦うゲームだというのに、最終的にはそのコンセプトも揺らぎつつあったのだ。

「スプラトゥーン」のアップデートは新モード・ブキ・ステージが追加されることから皆に歓迎されていたが、このようにゲームバランスとしてはかなり苦労していたであろうことがわかる。アップデートで環境を大きく変えようとすればそれを逆手に取られてしまうことすらあり、単純に追加・修正をするだけではイタチごっこを繰り返すだけであった。

ガチマッチの各ステージには不具合を修正するための黒い壁がたくさん追加され、景観的にも少しずつおかしくなっていく。また、上級者はともかく、それ以外のプレイヤーには各ルールの説明が足りておらずきちんと理解されていないこともしばしばあった。決して「スプラトゥーン」も出来が悪いわけではないのだが、そのうち根本から大きく変えていく必要が出てきたし、そもそも売り切りタイトルということもあり調整を続けていくという形には限界があったのだろう。

コンセプトを改めて伝えるためにイチから歩み直した「スプラトゥーン2」

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“4対4でカジュアルにもガチにも遊べる奥深い対戦ゲーム”をよりうまく伝えるには、一度状況をリセットしてやり直すほかない

華々しいアップデートの裏でさまざまな課題を抱えていた「スプラトゥーン」。この状況を打破するにはもはや生まれ変わるしかなく、それが新作となる「スプラトゥーン2」へと繋がっていったのだろう。本シリーズのコンセプトとなる“4対4でカジュアルにもガチにも遊べる奥深い対戦ゲーム”をよりうまく伝えるには、一度状況をリセットしてやり直すほかない。

そして、同時にヒーローモードをより優れたチュートリアルにし、より多くの人を惹き付ける協力プレイモードのサーモンランを追加。またイカたちのオシャレを楽しみやすいシステムを用意したり、LANプレイやローカルプレイにも対応し、大会なども行いやすくする。さらにはスマートフォンを使うことによってボイスチャットにも対応。アップデートだけではできないことも行うため「スプラトゥーン2」は新作として登場したのである。

発売直後の現在、「スプラトゥーン2」の環境はまだ未成熟である。今後はアップデートでさまざまなブキやステージが追加され、バランス調整も施されることだろう。そのため本作の評価は難しいところなのだが、現段階で見る限りは反省点を活かした立派な作品になっている。前作を2000時間以上遊んだ私もなかなかの新鮮味を感じることができており、大きく変化したブキを触るのが楽しくて仕方がない。

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