古代ギリシャを舞台とした『アサシン クリード オデッセイ』は、実は全くスパルタのように質素を重んじるゲームではない。並外れたスケールを誇るこのアクションRPGは、かつてないほど壮大で美しいオープンワールドにおける輝かしい大冒険である。質も量も重視してどちらも犠牲にしない本作は、以前の「アサシン クリード」を凌駕してシリーズ史上で最も印象的なゲームとなっている。

『アサシン クリード オデッセイ』は2400年以上も前、アテナイとスパルタが古代ギリシャの覇権をめぐって数十年の争いを繰り広げたペロポネソス戦争の勃発からスタートする。歴史フィクションのサンドボックスにおける疾走や航海、戦闘からなる60時間以上の驚嘆すべきプレイ体験の後は、その世界で懸命に戦うことの価値を容易に説明できる。

『アサシン クリード オデッセイ』の世界は、シリーズの中で最も大きくカラフルで躍動感にあふれている

『アサシン クリード オデッセイ』の世界は、シリーズの中で最も大きくカラフルで躍動感にあふれている。実際にプレイしているときは、画面はよくエーゲ海の気まぐれな青海原に染められているが、アクセスできる舞台全体は広大で、驚異的なほど美しい。

ゲーム内の一つひとつのロケーションはすべて圧倒的な規模感を誇るが、欠点も密かに存在する。描画距離の問題やテクスチャの遅いレンダリング、脱出できない場所などが時折ゲーム世界への没入の邪魔をする。他にもゲットできるはずなのに物理的に到達できないアイテムや、飼い馴らした動物が、プレイヤーがゲーム内で死んでリロードしたのちに野生の獣に戻ってしまうといった問題がある。このようなバグはもちろん鬱陶しいが、本作の世界が私のゲーム体験の中で最も優れたオープンワールドのひとつだということは事実である。

ヒストリー(彼の物語)とハーストーリー(彼女の物語)

「アサシン クリード」のゲームとしては初めて主人公の性別――兄妹であるアレクシオスかカサンドラ――を選べるようになった。実質上、ゲームをプレイする上では同じキャラクターだが、カサンドラのボイス(英語版)は男性のアレクシオスより一貫してクオリティが高い。

また、本作の主人公はシリーズ史上最も柔軟性が高い。

キャラクターたちのアクセントは適切だったり、過剰に大げさだったりするが、表情のアニメーションは見事で、言葉を口に出さなくても、顔を見ればアレクシオスとカサンドラの微妙な嫌悪感や戸惑いを感じ取れる。また、本作の主人公はシリーズ史上最も柔軟性が高い。私が選んだアレクシオスは傭兵として、キャラクター展開の方向性を自由に決められる。彼は良心のある雇兵にも、短絡的思考を持つ好色な男にも、殺人を好む冷酷なサイコパスにもなれるのだ。“間違った答え”は存在しないが、選択が必ず結果を伴うということを忘れてはいけない。

会話の選択肢の大半は、プレイヤーが選んだキャラクターが正直者になるか嫌なヤツになるかを決める以外に大した意味はないが、一部の判断は周りの世界に影響する。主人公の行動によって多様なサイドミッションがプレイ可能になり、特定のサブキャラクターの生死が分かれるので、最終的にゲームのエンディングも違ってくる。やりたいことのために自分を犠牲しているとは一度も感じず、束縛を受けずになりたい自分になれるのだ。

束縛を受けずになりたい自分になれるのだ。

私はあまりにも怠惰――あるいは自信満々――なので、プレイヤーの「悪評レベル」に基づいた新システムを無視して殺しのアプローチを採ることが多い。最初、私は自動生成された、私への襲撃を命じられた傭兵たちを、私にアイテムを提供する人形としか思っていなかったが、要塞攻略の最中に傭兵が大挙してやって来たときに初めて彼らを価値のある敵だと認識した。彼らがゲームにもたらすカオスな未知の要因は楽しいものだ。徐々に高レベルの傭兵をやっつけて伝説的な戦士たちの注意を引いて彼らと戦う機会を得るのは、それ自体が面白いメタゲームである。

国家間の争いに関するシステムは、それぞれの地域でスパルタあるいはアテナイを手助けする選択の自由を与えてくれる。軍需品を破壊したり、軍事費を略奪したり、国家の指導者を権力の座から追放したりすることを通して、征服戦争を誘発できる。大規模な混戦や海戦は素晴らしい戦闘を可能にしているが、物語への影響はがっかりするほど小さい。どちらの助っ人になっても、あるいはどちらが戦争に勝利しても、メインストーリーにおける両国の軍事力は自ずと変化し続ける。

せっせと仕事に励め

弱攻撃と強攻撃による流れるようなダンスという戦闘スタイルの点では、『アサシン クリード オデッセイ』は前作の『オリジンズ』の特徴を継承している。武器には剣や短刀、斧、メイス、槍、杖があり、それぞれ異なる特色を示している。斬ったりスキルを活用したりするシステムは、熱戦の最中でも把握しやすく、私は今でも戦闘そのものを楽しむためだけに敵に喧嘩を仕掛けたりしている。

プレイヤーは膨大な種類の武器と防具を見つけて、アップグレードして、強力なPerkを付けることができる。ゲームの後半になると、資源を十分に投入すれば低レベルのレジェンダリー装備でも有用な物にできるという点も素敵だ。私の良き相棒の古いヘルメットを強化するために必要なクラフト用アイテムやお金がなくても、有望な新しい装備が続々と現れるので困ることはない。

成長システムは3つのユニークなスキルツリーからなる。「ウォリアー(近接)」と「ハンター(弓)」、「アサシン(刺殺)」の3種類の系統において、それぞれ戦場で大いに暴れるための強力なアビリティを獲得できる。私はウォリアーのスキルツリーに集中してアレクシオスを殺人マシンに育てたが、同時に他のアビリティ――弓を使って敵の頭をかち割る「Predator Shot(プレデターショット)」やステルスにキルできる「Shadow Assassin (シャドウアサシン)など――にもちょっと手を出している。

すべてのスキルは獲得するための努力を費やすだけの価値はある。その中でも重力を利用した一撃必殺の「Sparta Kick(スパルタキック)」は、私のほぼ半分のプレイスルーを通して最もパワフルで楽しい“武器”だった。

戦闘と言えば、海戦も重要な位置を占めている。本作の海戦は「アサシン クリード」史上最高のものだ。プレイヤーは弓や衝突で船が受けた損傷を修復したり、船の耐久性を高めたりといった素晴らしいオプションが与えられている。ほとんどの敵は征服して自分の船のメンバーにすることが可能で、船のカスタマイズに副次的でありながらもスマートなレイヤーを加えている。鏡のように静かなエーゲ海を滑らかに航行して、海賊やスパルタ人、アテナイ人の艦隊、そして無力な商船に向こう見ずな突撃をするゲームプレイは、ギリシャの海域で長い時間を過ごした後でも私がとても楽しく感じるものだ。

家庭の事情

アサシン教団対テンプル騎士団のメロドラマが存在しないおかげで、単純な家族のドラマはより面白いものへと昇華できた

大量のサイドミッションと戦闘は面白いが、最終的にはゲームのメインストーリーを進めなければならない。そしてこちらも同様に楽しいのだ。むき出しの感情が偽りなく現れる瞬間は、私のキャラクターたちへの理解と共感を促進してくれる。使い古された「アサシン教団対テンプル騎士団」のメロドラマが存在しないおかげで、単純な家族のドラマはより面白いものへと昇華された。変化と印象深いサブキャラクターに富んだストーリーは、私を最後まで魅了した。

しかし、本作のメインストーリーは無意味なお使いからなるミッションの連続で引き延ばされ、キャラクターたちの力強くエモーショナルなシーンへたどり着くまでの道のりは骨の折れる作業となっている。主要キャラクターがようやく登場するときは、すでに興奮が覚めているのだ。そこに到達するのに、ギリシャ全土の半分にわたって6時間も無駄な努力をしなくてはいけなかったからである。

だが、メインストーリーを完成させた後でも発見を待つ多くの要素があるのは、実に見事だ。ゲームのクリア後、次はどこに行って何をするべきかということについて、私はゲームを始めたばかりのときとほぼ同じように圧倒された感覚を味わった。悪のカルトであるコスモスの残党を倒したり、今日のストーリーへと繋がる遺跡を見つけ出したり、神話上のモンスターに戦いを挑んだり、ギリシャの伝説に存在する野獣を狩猟したりするなど、クリアした後でも発見していける大量のコンテンツが存在し、退屈はしない。

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