カッコいいとはどういうことだろう? 曖昧な言葉なので回答はいろいろ思いつくだろうが、ひとつの答えとして“速い”ということが挙げられるはずだ。小学生は足が速い子がモテるし、ニンジャだってすばやく動けるから憧れられる。あるいはテキパキと仕事や家事をこなす様だってカッコいいといえるだろう。

『Wizard of Legend』は、まさしくカッコいい魔法使いが主役のアクションゲームだ。本作ではカオスの試練なるダンジョンに挑むことになるのだが、魔法使いのアクションはとにかく速い。ダッシュや派手な魔法を駆使しつつ、かなりのスピードで敵を倒しながら迷宮を駆け巡るのだ。

このゲームはロサンゼルスのゲームデベロッパー、Contingent99が開発したインディーゲーム。ジャンルとしてはローグライク・アクションといったところだろうか。カオスの試練は自動生成されるため、冒険の内容は潜るたびに異なる。この試練は厳しいため多くのプレイヤーは何度も打ちのめされるだろうが、死ぬまでに得た知識と技術を活かして攻略を目指していくことになるわけだ。

なお、今回のレビューにおいてはNintendo Switch版をプレイした。たまに処理落ちが見受けられるほか、ロードがやや長めなのは気になったが、軽微な問題であると考えてよいだろう。

ランダムに作り出される迷宮に挑むなら、魔法と道具の選択が重要だ

Wizard of Legend
ピクセルアートも本作の魅力のひとつ。魔法のエフェクトはどれも迫力がある。
100種類以上もある魔法の内容は実にさまざま

ローグライクというと裸一貫でダンジョンに挑みアイテムなどを拾って戦略を立てる……と思う人もいるだろうが、本作はむしろ持ち込み必須のシステムである。まず、魔法(アルカナ)は近接攻撃、ダッシュ、特殊な魔法2つという合計4種類を選ぶことが可能だ。そしてこの組み合わせが非常に重要となる。

100種類以上もある魔法の内容は実にさまざまで、単体で見ると使いづらいものも相乗効果を発揮するといきなり強くなることがある。土属性のパンチで相手を殴る魔法は隙が大きいが、自分の周囲に氷の刃を発生させる魔法と合わせれば隙が少なくなる。あるいは雷の槍を発する魔法や炎の龍を放つ魔法を中心とする遠距離特化にするなど戦法はさまざまだ。

さらに特殊な道具(レリック)をひとつだけ持ち込むことができるうえ、さまざまな効果を持ったマントも選ぶことができる。クリティカルが出やすくなるマントを着てクリティカルを出すと体力が回復する道具を持ったり、あるいは単純に防御重視の道具とマントを選ぶ安定重視の戦い方もいいだろう。

Wizard of Legend
道具(レリック)にどのような効果があるかは提示されていないため、一度入手して説明文を見る必要がある。プレイヤーがそれを覚えることによって、次の挑戦ではうまい選択をすることができるようになっていく。
ガンガン切り込みたい魔術師も、慎重に敵を排除していきたい魔術師も、きっと気に入る戦略がある

とにかく『Wizard of Legend』はこうして魔法や道具を選ぶのが楽しい。1度クリアしてもほかの組み合わせで挑戦できるし、選び方によっては戦い方も変化する。ガンガン切り込みたい魔術師も、慎重に敵を排除していきたい魔術師も、きっと気に入る戦略があることだろう。

当然ながら迷宮内で魔法や道具を手に入れることがあるのだが、これらは基本的に外に出ると失われてしまう。ただ安心してほしい。恒久的に使えるようになる魔法などは、ダンジョンに入る前にカオスジェムという特殊な通貨で購入することが可能だ。カオスジェムはプレイし続けていればとにかく貯まるので、挑戦すればするほど多様な魔法の組み合わせを任意で選べるというわけである。

迷宮をクリアしたあともやり込み要素がいろいろある。1度クリアした程度ではまだ見ぬ魔法はたくさん存在しているし、クリアしてから解放される特殊な魔法も存在するのだ。ダンジョンは10ステージで構成されているため意外と短めだが、コンプリートを目指せばかなり楽しめることだろう。

簡単にハイスピードアクションを体験できるが、ゲームの根っこは努力型のアクション

Wizard of Legend レビュー

このゲームの操作はシンプルだ。魔法使いをスティックで動かして、装備している魔法(4つ~6つ)を放って敵に当てるだけ。ただし、操作が簡単だからといって難易度が低いというわけではない。

そもそも何度も挑戦に失敗することが前提のゲームバランスになっているし、アクションゲームなので敵のパターンを覚えなければ大ダメージを受けてしまう。迷宮の中では呪いの道具を手に入れることもあり、これは効果が強力であると同時にデメリットが恐ろしい。ヘタを打てば、それだけでトラバサミに足を挟まれたかのような状態で冒険を続けねばならなくなるだろう。

各フロアをクリアするには中ボスを倒す必要があるし、さらに2フロアをクリアするたび評議員というボスが待ち受けている。当然ながらこのあたりはいかにもアクションゲームという感じで、魔法や道具の戦術である程度は楽になったとしても攻撃パターンはきっちりと覚える必要があるだろう。

Wizard of Legend

もちろんローグライクということで運の要素もある。ボスフロア以外では必ず道具と魔法と売る店が出現するが品揃えは一部を除いてランダムだし、ときには破壊するといいものをくれるピニャータが出てきたり、あるいは怪しい薬をくれる医師らしき人物もいるのだ。彼らが何をもたらしてくれるかは、やはり運によって変わっていく。生意気なピニャータをようやく破壊したと思ったらどう使えばいいのかわからない魔法が出てきたりして、もう1度ヤツを破壊したくなることだってある。

本作は、栄光を掴むための努力を喜んでできる人のためのアクションゲームである

『Wizard of Legend』の操作そのものは簡単だし、プレイすればするほどカオスジェムが貯まるので初期装備は充実していくうえ、道具や魔法の知識がつくため確実に冒険を進めていくことができる。しかしながら決定的な初心者救済要素は私がプレイした限りでは見つからなかったし、運がよければとても楽にクリアできるというわけでもない。魔術師たちは魔法でズルをすることはなく、地道に戦い続ける必要があるのだ。つまるところ本作は、栄光を掴むための努力を喜んでできる人のためのアクションゲームであるといえよう。

Wizard of Legend

なお、本作はローカルマルチプレイに対応しているほか対戦モードも収録されている。どちらもほとんどオマケに近いし、知識と経験がモノを言う作品なのでマルチプレイで気楽に遊ぶというゲームではないあたりはどうしても気になるが、ふたりで迷宮を攻略していくならば達成できたときの喜びも倍増することだろう。

ひとつNintendo Switch版で気になったのは、マルチプレイの際はJoy-Conの横持ちを強制させられる点だ。Joy-Con横持ちだと明らかに撃ちにくい魔法が出てくるため、アップデートする機会があればこのあたりを調整してもらいたいところである。

固定された要素とランダムで構成される要素の食い違い

Wizard of Legend

さて、『Wizard of Legend』は十分に楽しいゲームではあるが、欠点がないわけではない。確かにアクションゲームとローグライク要素の相乗効果はあるが、同時に気になるところも生み出されてしまっているというべきだろう。

アクションゲームとローグライク要素の相乗効果はあるが、同時に気になるところも生み出されてしまっている

そもそもアクションゲームと自動生成の相性はどうしても悪いところがある。敵のパターンを覚えて対処するアクションにはランダム性はないほうがいいし、かといって自動生成ダンジョンとしては潜るたびに展開が変わらないと困る。結局はどちらかに寄せねばならないわけだが、前述のように本作はアクション寄りになっているわけだ。よって、ボスのパターンはどうしても極端に変化させることができず、変化がないわけではないものの乏しいといえる。

ランダム要素にも問題点はある。確かに店にある魔法や道具によって戦況が変化するところは長所として捉えられるが、確実なクリアを目指すようになるとだんだんとリスクを取らなくなりやすい。たとえば呪いがかかった道具はリスクをいかに帳消しにするか組み合わせが重要になるのだが、ちょうどいいモノが揃うかどうかは運によるところも大きい。それならば、安全に進めたほうが……となり、知識がつけばつくほど安定志向になりやすいのである。本作のランダム要素は地形や敵の出現パターン以外は任意で取得するものなので、安定を目指してしまうとせっかくのランダム要素も大きな意味を持たないだろう。

Wizard of Legend

そしてもうひとつ。迷宮の形もいくつかのパターンが存在しているわけだが、敵との組み合わせによっては一瞬でハメ殺されることがある。本作は無敵時間がほとんどない仕様のため、場合によっては“一撃もらったらそのまま流れで死亡”ということも稀にではあるが存在する。その救済措置もなくはないのだが、それが出るかは運によるのだから、まったく魔法というのも万能ではない。

とはいえ、慣れきっていないうちはアクションとローグライク要素の組み合わせは楽しく感じられるものだ。なんとなく買ってみた道具の効果で一喜一憂したり、拾った魔法が使えないと思ったら別と一緒に使うことで真価を発揮したり、あるいはひたすらにカオスジェムを溜めて準備を整えたり……。そこから攻略のコツに気づいてしまうと、積極的に縛りプレイをする必要が出てきそうだ。

『Wizard of Legend』は道具や魔法の組み合わせを考え、いかに攻略するかを楽しく悩ませてくれるゲームだ。しかし残念ながら、本作におけるアクションとローグライク要素の組み合わせ方は完璧とは言い難いのである。