ネタバレなし: 以下のレビューには「ブラック・ミラー」新シーズンに関する重大なネタバレは一切含まれていない。


「ブラック・ミラー」シーズン4は衝撃的で、歪んでいて、面白く、同時に陰うつとしていて、まれにーー本当にまれにーー希望に満ちたものとなっている。そして何より、とても素晴らしい。

「ブラック・ミラー」シーズン4 レビュー

改めて説明しておくが、6つの各エピソードは独立した別々の物語を描いている。ドラマの舞台は近未来、それも現代の文化が悪夢のような発展を遂げてしまった近未来だ。

過去のシーズンは、技術の発展からインスピレーションを得ていることが多かったーー正確には技術が私たちの社会生活や日々の交流をいかに歪めていくかという視点だ。ツイッター、リアリティ番組、バーチャルリアリティ。これらはすべて、ドラマ内のディストピア的悪夢の根幹としての役割を果たしてくれた。本当に素晴らしい「ブラック・ミラー」のエピソードは現実味があるだけでなく、この未来は回避不可能だという絶望感、そして焦燥感を与えてくれる。

 

シーズン4では、その風刺の目は出会い系アプリ、オンラインゲーム、そして個人用の監視装置に向けられた。しかし、同シーズンの中でも特に出来の良かったエピソードは、1つの道徳観の描写に執着していないように感じられた。さらに興味深いことに、これらのエピソードは「ブラック・ミラー」の歪んだ世界を舞台にしているだけの、ただの物語なのだ。「Crocodile」や「Black Museum」といったエピソードは以前のエピソードで示唆されたアイディアを利用したものとなっており ― デジタル化された意識は、何度も焦点の当てられたテーマだ ― 物語をより簡単に作れるようにしているようだ。絶望的な未来のテクノロジーは、これらのストーリーの根幹をなす要素となっている ― ストーリーを進行させ、独特な設定を作り上げている ― その一方で、それだけが焦点というわけでもない。これらのエピソードはドラマの皮を被った道徳的教訓ではない。「ブラック・ミラー」はそもそも迫力満点のSFドラマであり、複数の解釈が可能であるというだけなのだ。

例えば「Crocodile」は、人が過去に経験した出来事の、その時の感情にアクセスできる装置を物語の焦点とした、悲痛で緊迫したスリラーだ。この装置は元々警察が作成したものだが、エピソードの中では保険仲立人が申し立ての正当性を確かめるために使用している。この装置のおかげで「Crocodile」のストーリーは面白く、緊張感にあふれたものになっているかもしれないが、この装置だけがストーリーの核心だとは一度も感じなかった。

 

Netflixオリジナル作品として製作されたシーズン3と同様に、製作者及び脚本家のチャーリー・ブルッカーはこのシリーズを通して様々な雰囲気、ジャンル、そして構成を試しているようだ。「Arkangel」はひとり親家庭で育った、力強い若い女性をメインに据えたドラマだ。同エピソードはアメリカのとある平凡な町を舞台としており、インディー映画のような雰囲気が特徴だ。「USS Callister」は一方で「スタートレック」のパロディのような、その一方で邪悪な側面をのぞかせるエピソードだ。「Crocodile」は過酷な気候のアイスランドを舞台にした暗いサイコスリラーとなっている。「Metalhead」は美しくモノクロ撮影されたサバイバルストーリーで、エピソード通して会話がほとんどない異色作品だ。製作方法はとても興味深いが、中身の薄い物語を無理やり40分間まで引き延ばしたようなストーリーのため、シーズン4の中では見劣りしてしまう。そして「Black Museum」 ― まあ、「Black Museum」は圧倒的で、狂気にあふれた、複数の物語によって混成されたホラーだ。舞台は道路沿いの、身の毛もよだつような犯罪を展示している狂気の美術館で、見る者を不安にさせるようなおもむきの3つのダークな喜劇を紡ぎ合わせて作られている。間違いなく、最高のエピソードの1つだ。

 

だが、個人的に気に入ったのは「Hang the DJ」 ― 憂うつな近代ラブストーリーだ。主役2人は進化した恋愛サポートシステムを使用している。システムはすべて人間関係を事細かに視覚化してくれ、特定の人物と何時間過ごすだろうという予測まで露骨に示してしまう。このエピソードは2人の主役に焦点を合わせ、恋を見つけるためのこの冷酷なやり方に対して2人がどう格闘していくかを映し出す。甘くほろ苦いながらも、非常に励みになるエピソードだ。

ブルーカーは協力者の助けを借りながらも脚本チームを再び率いた上、有能な監督や役者を集めて素晴らしい製作チームを作り上げた。監督陣にはジョディ・フォスター、ジョン・ヒルコート、デヴィッド・スレイドなどの才能豊かな監督が並び、役者陣にはローズマリー・デウィット、ジェシー・プレモンス、ジミー・シンプソンなどの著名な役者が名を連ねた。「ブラック・ミラー」の各エピソードはまるで、アイディアと才能をふんだんに使った別々のドラマ作品のようだ。