どんな番組であっても、最初のシーズンが成功したからといって、シーズン2で同じ魔法を再現できるとは限らない。“大ヒットドラマ”という名声には、前シーズンと同じクオリティの、いや、それよりも素晴らしいものを作らなければならないというプレッシャーと期待が伴うのだ。シーズン1の曖昧なエンディングで物語を完結させた方が良かったと主張するファンがいる中(私もその1人だった)、制作陣はシーズン2で非常に不利な立場にいたと言って良いだろう。

クリエイター兼エグゼクティブプロデューサーのザ・ダファー・ブラザーズとNetflixは否定派の意見を全て無視し、迅速にシーズン2に取り掛かった。彼らは最新シーズンで大きな世界を作り出そうとしていた。そして、計画することと、それを実際に実行することは、全く別のことだ。それでは、ザ・ダファー・ブラザーズはシーズン2を上手く作り上げることができたのだろうか?

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー

 

結論から言うと、「ストレンジャー・シングス」シーズン2は拍手喝采レベルの大成功だった。最新シーズンは既に完璧だったキャラクターをさらに掘り下げ、ホーキンスの世界を「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ウォーキング・デッド」といった素晴らしいTVシリーズと同じレベルに押し上げた。今のところ、ストリーミングサービスの世界を支配するというザ・ダファー・ブラザーズの計画は非常に上手くいっている。それでは、シーズン2がなぜここまで上手くいったのか、具体的な理由に迫っていこう。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー

まず、TVドラマ、特に子供を主人公にした番組において、トラウマ的な出来事が被害者の心に与える様々な影響をここまで丁寧に描いた作品は珍しい。デモゴルゴンとの戦い、イレブンの失踪、バーブの無残な死を忘れるのは簡単だし、これらのストーリーを無視した方がシーズン2の制作陣にとってはシンプルだったかもしれない。だが、それでは、ここまで魅力的なストーリーは生まれなかっただろう。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー

番組のライターは、キャラクターたちのトラウマを裏側に関連する出来事の直接的な結果として描くことで、彼らのキャラクターに深みを出している。最初のシーンから、視聴者はウィルの異変を感じ取る。シーズン1のほとんどを裏側で過ごしたノア・シュナップは今回、スター級のパフォーマンスを見せている。クラスメイトは、彼のことを「ゾンビ小僧」と呼ぶ。死んだと思われていたウィルは、シーズン2において「森で迷子になった奇妙な子供」として扱われているのだ。毎日、学校でジロジロ見られるのは、この年の子供にとっては辛いことだろう。

 

残りの子供たちも帰ってきている。私はまず、ダスティン(ゲイテン・マタラッツォ)とルーカス(ケイレブ・マクラフリン)の登場時間を増やした脚本家を褒め称えたい。ルーカスと彼の家族のやり取りはいつ見ても面白いし、ダスティンは思いもよらぬ人物と興味深い関係を築く。イレブンがいなくなった出来事から立ち直れないでいるマイク(フィン・ヴォルフハルト)も、魅力的だ。イレブンが消えてから約1年が経つが、マイクは未だに悲しんでいるのだ。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー

新学期となれば当然、転校生が必要だ。マクシーン(セイディー・シンク)、もしくはマックスは、少年たちに匹敵する魅力をもっている。シンクは彼女の年齢以上の演技を見せており、素晴らしい新キャラクターとなった。一方、義理の兄であるビリー(デイカー・モンゴメリー)となると、話は違ってくる。重大なネタバレは避けるが、彼は登場人物の中で一番弱いキャラクターであり、成長も遅いとだけ言っておこう。

だが、有り難いことに、イレブン役として帰ってきたミリー・ボビー・ブラウンには何の問題もない。彼女のプロットについてネタバレなしで語ることは難しいが、今回、彼女は興味深い場所に行き、新しい人々と出会う。ザ・ダファー・ブラザーズは「ストレンジャー・シングス」の世界をホーキンスの町を越えて広げており、シーズン2では新しいロケーションへの旅が楽しめる。

 

だが、ポスターやトレーラーに登場する巨大なモンスターはどうなっているのだろう。シーズン2では、去年のデモゴルゴンが可愛いうさぎに見えてくるような、巨大な敵が登場する。このシャドウモンスターは今回のメインとなる敵対者であり、彼は実に恐ろしい敵だ。裏側の世界は相変わらずだが、より巨大なヴィランを前にして、ホーキンスの町は去年よりも深く狂気に引きずり込まれていく。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー

町に潜んでいるのは物理的な危険だけではない。今回のシーズンが素晴らしいもう一つの理由は、子供たちや親が受けている心的なストレスを描いた点だ。異常なストレスに押しつぶされるキャラクターを演じることにかけては、ウィノナ・ライダーの右に出る者はいない。去年の出来事をまだ鮮明に覚えているジョイスは、ウィルに対し、過保護と取れる行動を取る。ライダーの演技をやりすぎだと思う人もいるかもしれないが、私は彼女がこの役にピッタリだと思う。ライダーとシュナップはシーズン2の後半で非常に引き込まれるシーンを共に演じる。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー

「ストレンジャー・シングス」シーズン2は決して欠点がないわけではない。急激なトーンの変化がエピソードの魅力を下げることもある。アカデミー受賞歴のある脚本家・監督のアンドリュー・スタントン(「ウォーリー」)が手がけたエピソード5「ディグダグ」では、「ストレンジャー・シングス」が急にギャグ満載の番組となってしまい、シーズン2の中で最もバランスが取れていないエピソードになってしまっている。ミリー・ボビー・ブラウンの息を呑むような演技でこのエピソードは救われたが、もう一つの次元に破壊されかけている厳しい現実を描いたシーズンの中では、このエピソードは場違いに感じられた。脚本家たちは、シーズン2が暗くなりすぎてしまうのを心配していたのだと思うが、そこに至るまでのペースが崩れてしまうのは残念だ。しかし、シーズン2はその後、よくなるので心配しないで欲しい。

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン2 レビュー