前作 「KNACK(ナック)」はある「アイデンティティ・クライシス」に陥っていた。なぜならば、子供向けゲームとしては難易度が高すぎるものの、キッズの遊びの範疇を越えるもの――洗練や多様性――は徹底的に欠如していたからだ。奇跡的にも、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)ジャパンスタジオはその続編を開発し、新たな危機(クライシス)を迎える可能性がありつつもリベンジを図る機会を得た。結果は一概に良いとは言えないが、少なくとも「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」は前作よりは優れたゲームになっている。

ナックの主な能力は前作と同じく、「レリック」を集めて巨大化したり、サイズの変化を面白く見せたりすることだ。身体が大きくなることに戦略性が存在しないことも前作同様だ。それでも、6メートルを超える巨体で、市街地で暴れ回るのは爽快としか言いようがない。

ナックは瞬時にレリックを落とすことで、狭い戸口を通り抜けたり、回転する凶刃の下をすり抜けたり、小さな足場から別の足場へ飛び移ったりした後、たどり着いた先で元の大きさに戻ることができる。このようなダイナミックで楽しいモーションは、「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」のフラットフォームアクションとパズル、隠された様々な秘密に組み込まれている。

 

実際のゲームの進行は、プラットフォームゲームに典型的なゲームプレイそのものだ。待ち受けるのは動く足場やトリック、罠、蒸気孔からなる多種多様なカラクリである。ナックは時折不器用に感じるが、ありがたいことにチェックポイントがふんだんにあり、再挑戦は容易にできる。パズルは、例えばブロックを移動させる、重量でスイッチを押す、鏡でレーザーを反射させて色々なものを作動させるなど、見慣れたものばかりだ。これらの要素が上手くデザインされていないとか、楽しくないというわけではないが、どれもこのジャンルではあまりにも当たり前すぎて、何の変哲もないのだ。

チェックポイントがふんだんにあり、再挑戦は容易にできる。

本作では、ナックの戦闘アクションが大幅に進化した。ゲーム終盤までに、ナックは多くの強力な技をマスターしている。戦闘では通常、多様な組み合わせの敵と遭遇するので、優先順位を付けて有効な戦術を考える必要がある。電気を帯びた敵に対しては攻撃の前に電気を無効化、飛び道具に対してはパリィ、盾を持った敵に対しては力づくで粉砕するといったアクションの使い分けが要求される。また、遠くにいる敵には回転キックで一気に近づいたり、小さくて弱い敵の大群をボディスラムで一網打尽にしたりできる。ナックのサイズが大きくなるにつれ、暴力的なボディスラムの爽快感も増していく。

数々のカオスを生み出す2人協力プレイは特に楽しい。もうひとりを敵に向けて蹴り飛ばしたり、パートナーにボディスラムを仕掛けて爆発を引き起こしたり、パンチで仲間のレリックをマシンガンのように“発射”したりといった、1人だけではできないゲームプレイが可能となっている。

 

このように、ナックを操作するのは楽しいが、現代的なゲームにおいて彼が最もつまらないキャラクターの一人だという事実は非常に残念だ。基本的に、ナックには「個性」がない。ゲームを通してほとんど喋らず、「ゴブリンが本当に嫌いだ」のような数少ないセリフは良く言えばおざなり、悪く言えば「ダサい」ものしかない。

ナックは現代的なゲームにおいて最もつまらないキャラクターの一人だ。

ナックを魅力的なキャラクターに仕上げることもできたのに、現状はあまりにも惜しい。しかもこれが全てのキャラクターについても言えるのだ。ナックとルーカスの関係に物語の焦点を置くべきだったが、この二人の間には本当に何も起こらないし、カットシーンでの会話も大した意味をなさない。ジャパンスタジオはこの二人を使って本作に個性を与えれば、今より遥かに多くのことが達成できたはずだ。

本作のストーリーは基本的にゴブリン、人間の街を襲うロボット、太古のテクノロジー、そして復讐計画の寄せ集めだ。その中に、たまに微妙な青少年の甘酸っぱくロマンチックな雰囲気がぎこちなく演出される。ゲームのエンディングを迎えるときはそれなりに満足感が得られるが、それは単にゲーム世界で10時間以上も過ごしているからであり、ゲーム体験が素晴らしいとは言えない。

冒険は壮大だが、キャラクター描写は微々たるものだ。

ゲームを通して見栄えに大きなムラがある。

「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」は、ゲームを通して見栄えに大きなムラがある。美しいシーンやQTE中のエネルギッシュな描写もあるが、全体的にゲーム世界は単に「ギリギリ十分」といったところだ。おまけに旅の仲間はガッカリするほど活気がない。

そんな旅の仲間たちはしばしば不可解なテレポートをやってのける。ナックが信じられないほど大量の難しい戦闘をして、アクロバティックなアクションを必要とするルートをやっとのことでくぐり抜けた後、人間のキャラクターたちが難なく付いてきたり、あるいはナックよりも先の場所にたどり着いていたりといったことが何度もあった。全く不思議で、明らかに説明が必要なのに、それが一切ないのだ。

ストーリーモードのエンディングまで約12時間を費やすことになるのだが、クリア後のコンテンツはわりと充実している。「NEW GAME+」モード、興味深いチャレンジ満載のタイムアタックモードがアンロックされ、好きなステージに再挑戦してハイスコアを狙ったり、サブクエストをコンプリートしたりすることもできるようになる。