豊富なボーカル付き楽曲
フィールド/戦闘時のBGM切り替え演出
エラー落ちが多発する不安定な挙動
楽しさを感じない煩雑なバトルシステム
事故多発の極端なエネミーエンカウント
マップ移動のたびに発生する長いローディング
次代の学園ジュブナイルRPG「Caligula -カリギュラ-」をクリアしました。
バーチャルアイドルを題材に作曲家の起用や、戦闘の予測が見える「空想視」を取り入れた戦闘といった、独創的な要素を豊富に盛り込んでいる本作。しかしながら、発想だけで面白さにはつながっていない作り込みで、RPGとしては短めながらも、途中でプレイする手を止めそうになる内容でした。
ゲームとしてクオリティが不十分というだけでなく、エラー落ちやフリーズ・壁ハマりなど製品としての完成度も今ひとつ。いい加減なゲームバランスと主人公死亡で即ゲームオーバーの仕様もあって、システム上のプレイ時間は短くても、現実のプレイ時間は悪い意味で計り知れない作品です。
机上の空論を形にしただけのバトルシステム
様々な連係攻撃と、コマンド選択後の予測が見える戦略性の高い戦闘。といえば聞こえは良いですが、仕様書を遊べるようにしただけといった感じで、面白くするための工夫や調整は余り見られません。雑魚戦ですら手軽に遊べないシステムとテンポの悪さもあって、とても煩雑に感じました。
特に、スキル使用時のSP消費は、とにかく枯渇が早い上に回復手段はSP回復スキルしかありません。無限コンボで封殺させないための制限とはいえ、2~3ターンに1回の頻度でチャージの長いSP回復スキルを使用するバランスになっているため、ストレスに感じることが多かったです。
要となる「空想視」も、全てがうまく行った未来だけを見せてくれるので、実際に行動すると回避などで結果が異なる場合が多々発生しました。どんなにうまく戦略を立てても、最終的には運に左右されてしまう中途半端なシステムで、遊べば遊ぶほどに「空想視」が信じられなっていきます。
事故多発の極端な難易度とエンカウント
シンボルエンカウントを採用しており、フィールドを徘徊する敵に発見されるとシームレスで戦闘に突入。戦闘中も他の敵は移動を続けているため、通りがかった敵が乱入してくることがあります。通路での戦闘や長期戦になるほど敵が増えていき、危機に陥りやすいエンカウントシステムです。
各フィールドには高レベルの敵が配置されており、その多くが初めて訪れた時点で簡単には倒すことのできない強さとなっています。逃走不能なので、うっかりエンカウントしたらゲームオーバー濃厚。一部は通路にも存在しているため、戦闘中に乱入されてもゲームオーバーの極端な作りになります。
加えて、多くのエネミーが長時間継続する範囲攻撃を持っており、狭い通路で囲まれると、先制から封殺される場合もあって事故が多発。1体ずつ引っ張ってきて処理すれば防げるものの、時間がかかりすぎるため、中盤以降は敵を避けて進んでいくステルスゲーム状態でした。
良い悪いという枠組みでは計れない自由奔放なカメラワーク
左右のスティックとLRボタンで自由に動かせるカメラですが、多くのオブジェクトを透過する仕様のため、隣の部屋に行ったり地面に埋まったりと、かなり自由度の高いカメラが用意されています。代わりに操作しなければまともに戦闘を映してはくれません。遊びやすいかどうかは別問題として、とんでもない視点が連発だったことはネタという意味で面白かったです。
マップ移動やイベント時に発生する異常に長いローディング
戦闘開始はシームレスで展開される反面、マップ移動時などのローディングが異常に長かったのは、気になる部分でした。広さで前後するものの、ローディング画面だけで30秒ほどかかり、画面が表示されてからもNPCや敵シンボルのロードに約10秒と、下手をすればマップ移動だけで1分待ちです。
一応、画面さえ表示されれば移動は可能ですが、完全に終わるまでダッシュ不能になっているため、大して移動することはできません。うかつに進むとロード完了によって出現した敵に囲まれる危険も存在するので、結局はロードが終わるまで待機するしかない中途半端な時間と化していました。
最大の敵はバリエーション豊富な不具合
とにかくゲームの挙動が不安定で、クリアするまでに合計6回のエラー落ち・フリーズ・壁ハマりが発生しました。エラー落ちならホーム画面に戻されるだけですが、フリーズは唐突に操作を受け付けなくなるので、本体に対する影響が心配になる挙動です。また、壁際で攻撃を受けると壁を抜けてしまい、戦闘中に謎の空間へ移動。終了後も壁の中から出られなくなるなど、デバッグ不足が目立ちました。
今後のアップデートで不具合などを修正・調整予定
この記事を書いている時点で、公式サイトにて「既知の不具合とその対応について」という記事が掲載されています。前述したフリーズバグ関連や進行不能の不具合を筆頭に、様々な項目の修正・調整予定が記載。正直、他に遊ぶゲームがあるならパッチの配信を待った方が賢明です。
面白いゲームがパッチで更に楽しめるようになるなら『期待』といえるのですが、発売の時点で完成を疑ってしまうクオリティ。そこに加えて発売数日後に修正・調整予定の発表では、熱意を持って発売直後に購入したユーザーが有料テストプレイヤー状態という悲しい現実を感じてしまいます。
王道ではないけれど中身もないメインストーリー
ストーリーに関しては特筆することがなく、悪くはないけど推すべき所も見当たらない所感です。各キャラクターの事情がメインシナリオで語られずにキャラクターエピソードへ丸投げされていたり、500人以上の生徒たちと交流を持てる要素も本編とは直接関係なかったりと、寄り道せずにストーリーだけを遊んでいては物足りない内容となっていました。
ちなみに、キャラクタエピソードのインパクトは抜群で、メインシナリオよりも忘れられない展開が用意されています。
さいごに
ここまで不満点を中心に書いてきましたが、唯一良かったのはフィールド/戦闘用のBGMです。フィールド時はインストゥルメンタルの楽曲が、戦闘開始と同時にボーカル付きに切り替わる演出は、フィールドごとに1曲ずつ用意されていることもあって、最後まで好印象でした。
今後、パッチ修正によってどれくらい遊びやすくなるのかは未知数ですが、発売の時点では粗ばかりが目に付く本作。ストーリー・ゲームシステム、どちらもコンセプトだけは面白いと感じたので、もう少し作り込んでから発売してくれれば良かったのにと惜しく感じる作品でした。